2012年末、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部で、2年生の男子生徒が顧問教諭から平手打ちの体罰を受けた翌日に自殺した。まことに痛ましいことであり、亡くなられた17歳の少年の冥福を祈らずにいられない。

 年が明けてから発覚した事件には、橋下徹大阪市長が、例によって居丈高な態度で介入し、桜宮高校の全教員の異動と体育科の募集中止を求めたことで、各方面から様々な意見が飛び交っている。

 私は体罰を認めない。私は親からも教師からも一度も暴力行為を受けたことはなく、私自身も子どもや部活の後輩を叩いたりしたことはない。つまり、体罰の効果も分かっていないわけだが、そんなものは知りたくもないというのが、私の基本的な立場である。

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 臆面もなく言えば、私はスポーツの経験は豊富で、運動神経も良かった。小学3年生から少年野球のチームに入り、中学と高校では学校のサッカー部に所属した。テクニックは特別優れていないが、とにかくスタミナがあった。ずっとレギュラーで、中学時代はセンターバック、高校ではゲームメーカーだった。

 私が在籍していたのは県立の進学校で、地区予選は突破しても、県大会の1回戦か2回戦で負けてしまう。それでも練習は厳しくて、毎日暗くなるまでグラウンドを走り回った。 

 高1の夏合宿では、しょっぱなの猛烈な走り込みで足の裏が腫れ上がり、校舎の階段を四つんばいで上った。これでは午後の練習はとても無理だと思っていたのに、スパイクを履くとなぜか走れて、自分のしぶとさに呆れた。

 顧問のA先生は、サッカーの技術はぴか一だったが、けっこう口が悪かった。試合中にパスミスをして、相手にボールが渡ってしまうと、「おまえは敵のスパイか!」と怒鳴る。

 「スパイなんか、いるわけねえじゃんよ」とグラウンドの我々は愚痴をこぼしていたので、A先生のハッパはまるで効果がなかった。