フランス軍による西アフリカ、マリへの空爆が続いている。北部を制圧している反政府武装勢力アンサル・ディーンが南部へと攻勢を強め、マリ政府の要請を受けたフランスが特殊部隊を投入するなど軍事介入に踏み切ったのだ。
オランド政権がテロとの戦いに踏み切った理由
しかし、リビア内戦で使われた武器の流入もあり、激戦模様。武装勢力は「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQMI)」との関係も指摘されており、周辺国の部隊派遣、そして米国やEUが後方支援する動きも出ている。
昨年5月に発足したフランソワ・オランド政権は、選挙公約だったアフガニスタンからの戦闘部隊早期撤収を昨年末すませた。
マリ同様、フランスの旧植民地で、先日停戦が成立した中央アフリカ共和国での内戦激化の危機にも、内政干渉しないと言い切った。
それらとは温度差が感じられるのも、今回「テロとの戦い」とは語っていても、隣国ニジェールのウラン鉱山など重要な権益のあるこの地域が不安定なのが堪えているからだろう。
2年前の「サルコジの戦争」は、無敵と思われていたカダフィ大佐を駆逐した。しかし、独裁者ではなく砂漠に散らばる不定のテロリストをも相手にせざるを得ないこの「オランドの戦争」は、より「ブッシュの戦争」に近い泥沼を連想させる。
イスラム過激派がフランスへの報復を警告
事実、この攻撃に対しイスラム過激派はフランスへの報復を警告。在外公館、そして国内でも警戒が強化されているが、テロへの危機感はもとより、移民、イスラム教徒への風当たりも心配になってくる。
時をほぼ同じくして、パリ中心部では、亡命生活を送るクルド労働者党(PKK)関連組織の女性活動家3人が殺害され、その事件を受けて1万人以上のクルド人がデモを繰り広げた。
クルド問題もまことに頭の痛いものだが、フランス社会には、マグレブ、サブサハラ、中東、アジアなど実に多種多彩なイスラム教徒が組み込まれ、パリ郊外、イル・ド・フランスにはこうした移民たちが暮らす大規模な公営住宅も多い。
そこでの生活は『憎しみ』(1995)で語られるように希望のないものも少なくないようだが、オランド社会党政権下ならまだましというもの。