どうやら我々は生きのびることができたようだ。「世界終末の日」は訪れなかったのだ。

 5000年以上続く古代マヤの長期暦がこの12月21日をもって途切れてしまうということから取り沙汰されてきた終末論は、現実のものとはならなかった。

 そんなマヤ暦のことが広く知られるようになったのは、1987年、「The Mayan Factor」(ホゼ・アグエイラス著)が米国で出版されてからだった。

ハリウッド映画が引き金になった世界終末論

グアテマラ アティトラン湖

 しかし、今回、これほどまでに騒ぎたてられるようになったのは、それを終末論としてとらえた2009年公開のハリウッド映画『2012』が、世界中でヒットしたからと言えるだろう。

 その内容は、終末に向かう世界から「選ばれし者」がノアの方舟の如き巨大脱出船に乗り込んで人類存続を図るというSF映画の古典『地球最後の日』(1951)あたりから続く米国らしいもの。

 そして、ディザスタームービーにつきもののパニック状態に陥った人々の描写のなかには、大勢の人がマヤ遺跡で自殺したことを伝えるニュース映像がある。

 しかし、その映像の地となった現実のティカル遺跡(グアテマラ)では、21日、「新たな時代」に入ることが祝われる式典が無事行われた。

 そのティカルのピラミッドが映し出され、地下にある秘密基地から宇宙へと飛び出していく『007/ムーンレイカー』(1979)のボンドの敵役は、毒ガスによるテロ行為で人類を殲滅に至らしめ、自らが選民の主となり新帝国をつくろうとする。

 うまく考えられたプロットにも思えるのだが、実は、この映画、マヤの終末論を意識して作られたわけではなく、それどころか、その地はアマゾンの奥地との設定。マヤ遺跡が映し出されることさえ必然性ゼロなのである。

 単に、世界の未知なる風景を見せたい、との作り手の狙いあっての選択だったらしい。