首相に就任する自民党の安倍晋三総裁は憲法の改正を正面から検討し、推し進めることを宣言した。日本維新の会など自民党以外の政党も、いまの憲法の欠陥を指摘する傾向が広がってきた。前首相となる野田佳彦氏もいまや改憲論者として知られてきた。
思えば、日本の政界の憲法への姿勢もずいぶんと変わったものである。私自身は長年にわたり、国外での報道活動を重ねるほどに、日本の憲法の欠陥を意識するようになった。そして、その是正の必要を強く感じてきた。だから日本国内の現状には多数派の意見がやっと国際的な現実に追いついてきた、という思いをも抱く。
もちろん日本国憲法にはそれなりの効用もあった。とにかく、なにがなんでも武力は使わないという宣言は人類の理想の表明だと言えよう。他国の善意や公正に信をおくという大前提も立派な思想ではあろう。実利面を見ても、東西冷戦の中で自国の防衛を同盟相手の米国に委ねて自国の経済繁栄に集中することができたのも、憲法のおかげだろう。
だが、日本が独立した主権国家として、自国の安全を守る、国土や国民を防衛する、ということとなると、この憲法は明らかに制約が多すぎた。欠陥が多々だった。多くの国家が利害を対立させる現実の世界で、“どんなことがあっても、たとえ自国を守るためであっても、武力を使わず、戦わない”と言うに等しい宣言は、降伏や屈服という選択肢を残すだけである。
憲法第9条に書いてあること
では、日本の憲法にはどんな欠陥があるのか。なぜ、そうなのか。
そのあたりの解説を試みる本をこの11月に上梓した。『憲法が日本を亡ぼす』(海竜社)という本である。タイトルはやや大げさに響くかもしれないが、尖閣諸島や竹島という固有の領土に実際の脅威が迫るいまの日本にとって、現行の憲法では十分な国の防衛ができないという懸念を、深刻に感じるようになったのだ。
2012年という激動の年が終わりを告げるに際し、わが日本にとっての憲法という古くて新しい課題を自著の骨子に沿って整理してみたい。
論議の焦点となる憲法第9条の条文を、まず改めて点検してみよう。
憲法の第2章「戦争の放棄」と題され、第9条の見出しの後には<戦争放棄、軍備不保持、交戦権否認>と記されている。その次に以下の記述がある。
<日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。>