一向に出口の見えない日本のデフレ経済。消費者の低価格志向は強まるばかりで、商品を提供する企業は利ざやを削られ、業績が頭打ちだ。
こうした環境下、大手小売企業の新たな戦略がジワリと進行し始めている。新戦略を読み解くキーワードは“秘かな業態転換”。新たな試みは消費者に利益をもたらすのか。先行きを占ってみる。
デフレの影響をまともに受けた大手小売業のスーパー事業
「なんとしてもデフレ状態から日本を脱却させます!」・・・。
投開票が終わった衆議院選挙で、各党のトップのみならず、街宣車で走り回った各候補者たちの口から、こんな言葉を嫌というほど聞かされた向きが多いはず。
不況の長期化で消費者の低価格志向が経済全体に浸透し、企業の業績が低迷。これがさらに消費者の手取り賃金の低下を招き、商品価格の一層の低下を促すのがデフレスパイラルだ。
日本経済は1998年頃からGDPデフレーターや消費者物価の下落が始まったとされるが、総選挙時の威勢の良い掛け声とは裏腹に、これを解消する決め手は見つかっていない。
デフレの影響を真っ先に、かつまともに受けた業種の1つに、総合スーパー事業を展開する大手小売業がある。
セブン&アイ・ホールディングスが10月に発表した2013年2月期業績見通しは、営業利益が従来予想の3150億円から3080億円に、当期利益は1550億円から1430億円にそれぞれ引き下げられた。同社の代表的なブランドであるイトーヨーカ堂などスーパーストア事業の不振が原因で、業績修正の発表直後に株価が急落する事態となった。
イオンも同月、通期業績見通しを発表した。同社は通期予想こそ据え置いたものの、主力のスーパー事業の落ち込みが目立ち、カードなど金融事業やショッピングモールなどデベロッパー事業が全体を下支えする構図が鮮明となった。
両社ともにプライベートブランドの拡充を急ぎ、主力のスーパー事業の立て直しに躍起となっているが、デフレの出口は一向に見えず、同事業の下げ止まりも「見通しにくい状況が続いている」(銀行系証券の小売担当アナリスト)。
両社ともに中国をはじめアジア新興国への進出を加速させてきたが、「先の反日デモの影響で、今後会社側のシナリオ通りにアジアでの業績が伸びるとは思えない」(同)という厳しい側面もある。