早いもので、2012年も締めくくりの12月を迎えた。当連載では「ソーシャル化する社会」の様々な現象に着目し、言及を重ねてきたが、2012年はその加速がいっそう強まった1年であったと言えよう。
その総括として、「2012年のソーシャル化する社会」の要諦を、2回にわたり整理してみたい。
日本の政治史上初、画期的な“ソーシャル党首討論会”
11月29日、「ニコファーレ」(東京・六本木)で開催された「ネット党首討論会」は大きな話題となった。
民主党代表の野田佳彦首相や自民党の安倍晋三総裁ら10党の代表が集まり、1時間半にわたる議論が「ニコニコ生放送」でライブ配信された。このような動画共有サイトでの党首討論会は初の試みであったが、公式発表によるとその総来訪数は140万3551人にまで及んだ。
これは、日本の政治史の中でもひとつの大きなトピックとして刻まれることになるだろう。
特記すべきは、インターネットのメディア上で党首討論会が開催されたということよりも、リアルタイムに表示される視聴者が書き込んだ感想や意見が50万件超にまで達したことだと考えている。
ニコニコらしさとも言える自由度の高い表現はこの場でも健在で、各党への賛否両論を含めた思いつくままの投稿が数多く寄せられ、会場の周囲360度の壁に埋め込まれたLEDディスプレイにそのコメントの一部が流された。
各党の代表が討論するその背後のスクリーンに、視聴者の自由なコメントが流れるという光景は、少し前であれば考えられなかったことであろう。何せ、そこに書かれる内容はアンコントローラブルであり、それをそのまま生放送することのリスクを許容することは、“ソーシャル化する社会以前”であれば難しかったに違いない。
当初、自民党の安倍総裁がこのニコニコの活用にポジティブな姿勢であったのに対し、民主党サイドはそれをリスク視する向きが強く、ネガティブな姿勢を示していた。
しかし最終的にそれを採択する(せざるを得ない)結論に至ったことは、「ソーシャル化する社会」がもはや歯止めの利かない潮流(民意)であり、2012年はその潮流の勢いが増す節目となったことを物語っているように感じられた。