欧州債務危機が中国の輸出不振をもたらし、「世界経済の頼みの綱」である中国の経済成長を圧迫する――。半年ほど前に懸念された負の連鎖が、まさに今現実のものとなった。直撃を受けたのは中国の太陽光発電業界である。
欧米市場は頭打ち、中国国内でも過剰な生産設備を抱え、八方ふさがりに陥った。あの「世界一」を標榜した太陽光パネルメーカーのサンテックパワー(尚徳太陽能電力有限公司、以下、サンテック)でさえ、経営破綻の危機に追い込まれている。
サンテックの経営破綻危機はもはや周知の事実となっている。実際に取引に関わったサプライヤーは「資金回収ができない」と嘆き、中国メディアは「経営者一族は資産を別会社に移管し、自分たちだけ逃げ切るつもりだ」と責め立てる。
サンテックは、中国企業として初めてニューヨーク株式市場に上場した世界最大の太陽光パネルメーカーである。2006年に日本の中堅太陽電池メーカーのMSKを買収して以来、過去5年で売上高を100倍、営業利益を200倍に伸ばした。創業者の施正栄(シ・ジェンロン)氏は、2000年の起業からたった5年で「中国一の金持ち」に躍り出た、いわゆる“チャイナドリームの権化”だった。
ところが今、サンテックは2012年3月時点で約16億ドルの純負債を抱えている。ブルームバーグの報道によれば、「2011年1~3月期(第1四半期)以降、赤字決算が続き、8月末に出された決算速報(第2四半期)には、債務負担の詳細が記載されていなかった。同時にNY証券取引所は、サンテックに対し上場廃止の可能性を警告している」という。
中国の経済メディア「証券市場周刊」もこう警戒する。「2012年第3四半期には、A株上場66社(注:上海・深センの株式市場にはA株とB株がある。A株は基本的に外国人投資家が取引できない)の太陽光発電企業の在庫は500億元にも膨らんだ。その一方で、売上高は100億元にも満たなかった。サンテックが拠点を置く無錫市でも、上半期の営業収入は200億元足らずと、前年同期の4分の1に減少した。太陽電池メーカーの大全新能源や晶澳太陽能などの太陽光発電関連メーカーも、NYナスダック市場から上場廃止の警告を受けている」
だが、「サンテック倒産」の報道はない。それは、サンテックが本拠地を置く無錫市の市政府が、サンテックの倒産回避に必死になっているためだ。地元メディアは「8月の施正栄CEO辞任を受け、新CEOに昇格した金緯氏は無錫サンテック(サンテック子会社)の倒産を提案したが、無錫市政府の猛烈な反対に遭った」と伝える。
約89億元にも上る無錫サンテックの借金を無錫市政府と銀行に押しつける形だ。また、倒産させれば無錫市だけでも5万人が職を失う可能性があるほか、サプライヤーも積もりに積もった売掛金10億元の回収ができなくなる恐れがある。
工場が退去し「もぬけの殻」となった開発区
危機的状況なのはサンテックだけにとどまらない。いまや中国の太陽光発電業界には「壊滅的な危機」が忍び寄っている。