その結果、「生粋の民間企業による健全な市場運営」とはどんどんかけ離れていった。結局、経営は地元政府の資金によって行われることになった。

 しかし、それは本来“他人のカネ”である。経営者は企業内で発生した伝票を政府に送りつけ、何かあれば政府に「何とかしてくれ」と頼み込む。経営者は “私情原理”に動かされ、市場を意識するどころか、市長の顔しか見えていなかったことは容易に想像がつく。

 太陽光バブルが崩壊し、業界壊滅の危機にあっても、前出した蘇州の企業経営者M氏は、「我々は悲観していませんよ。いずれ政府がなんとかしてくれるでしょうから」と、どこか他人事であった。

 11月9日付の「東方早報」には、サンテックCEOの施正栄氏の発言が掲載されたが、これも同じような内容だった。「企業と政府の連帯を強め、競争の過熱を防ぐような政策を出してもらいたい」――。政府に頼ろうとする姿勢は、この期に及んでも変わらない。

中国の太陽光バブル崩壊で世界経済がドミノ倒し?

 果たして中国の太陽光発電業界は復活できるのか。

 「むしろこれからが本当の泥沼だ。ほとんどの企業の借り入れに市政府が保証人になっており、銀行はその資金回収に頭を痛めている」(中国人コンサルタントのP氏)

 また、アメリカの調査会社であるGTMリサーチは、次のように指摘している。「2011年にもたらされた太陽光発電産業における需給関係のバランスの崩れは、2014年までに回復することはないだろう」

 その一方で、サンテック崩壊を好機に「ようやく健全な商売ができる時代が来る」と期待する企業もある。

 中国の太陽光バブルの崩壊は、輸出依存型の産業構造の危うさを象徴する典型例でもある。だが、内需に期待できるのかと言えば、それもまた難しい。中国の空は地方でも大気汚染がひどく、安定的に日照を確保することは難しい。高層マンションが多い都市部では、そもそもソーラーパネルを置くスペースすら確保することが困難だ。

 中国政府のテコ入れで過剰に生産された太陽光発電関連製品は、国際市場にばらまかれ、各国で貿易摩擦や経済対立を引き起こし、産業全体を破滅に追い込む可能性をも秘めている。

 中国の太陽光発電産業の凋落は、「中国内部の矛盾」を白日のもとにさらけ出したとも言える。中国の「特色ある社会主義」は、このまま世界市場をドミノ倒しのようになぎ倒してしまうのか。

 前政権の膨大なツケを押し付けられて船出する習近平政権は、世界経済の負の連鎖の発火点となる大きなリスクを背負わされている。