日本発祥の生け花は、いまや海外に広まっている。ヨーロッパでも、日本滞在中に生け花に魅了された女性が教師となって教えたり、師範資格を持つ日本人女性が教えている。

 ヨーロッパにはフラワーアレンジメントという洋風の花の装飾の仕方があるが、生け花はどう受け止められているのか。パリでアトリエを構えて生け花を教え、自身の作品も意欲的に発表し続ける若き華道家、新井里佳に話を聞いた。(文中敬称略)

考え過ぎずに花に向かい、自分の感覚を大切に

パリで生け花を創作し続け、教室も開く新井里佳さん。「花のはかなさが魅力」と話す。写真は自身のアトリエAtelier d'HANAの記念パーティーの様子(写真:特記した以外はすべて新井里佳さん提供)

 生け花というと、流派ごとの伝統的な考え方や型があり、それを守って花を生けていくというイメージがある。流派は現在300以上もあると聞く。

 日本では最近は型をやぶった割と自由な作品も登場するようになってきているが、新井の住むフランスではいろいろな流派が活動していて、全体的に型を重視した傾向があるという。そんな中、新井は創作性や自分らしさを大事にしている。

 「いつでもどこでも誰にでも、そして何でも生けられる、ということを基本に私の生徒たちに教えています。これは私が学んだ草月流の考え方です」

 パリにアトリエを開いてちょうど4年になる新井は、フランス人やパリ在住の日本人に生け花を教えている。初心者から上級者まで毎週1時間半~2時間のレッスンで、1作品を作ってもらっている。新井が重視することの1つは、あれかこれかとじっくり考え過ぎずに生けることだ。

 「花を生けるには、瞬発力、決断力が大事なのです。花には体温が伝わっていくし、一気に作らないと花はどんどんしおれる方に向かいます。それに一気に作らないと、出来上がったときに作品に勢いや躍動感が表れてきません」

 「ですから、生徒が枝をどこで切ろうかと迷っていたら、私はとにかく自分が切りたい箇所で切ってみなさいと言います。切ってみて切り過ぎてしまったと気が付いたら、その失敗は次回に生かせるわけですから」