残念だが今回の温家宝首相訪日でも、日中間で米中間のような戦略的議論や取引が行われた形跡はない。
今回の首脳会談では、東シナ海ガス田開発で「できるだけ早期に2国間条約締結交渉に入ること」「海上危機管理メカニズムを早期に構築すること」「首脳間のホットラインを構築すること」に合意したものの、あとは鳩山首相の上海万博出席と冷凍ギョーザ中毒事件の決着ぐらいだろう。
これが現在の日中対話の実態である。
「米中対話」進展の経緯
このように、対話は対話でも「米中」と「日中」では雲泥の差がある。しかし、「戦略対話」とはいっても、米中間で常に戦略的議論が交わされてきたわけではない。
現在の米中対話の原点は5年前の2005年8月、北京で開かれた第1回「米中上級対話(The U.S.-China Senior Dialogue)」に遡る。
当時の米中対話は米国務省と中国外交部間の副大臣・次官級の協議だった。
この「上級対話」では対テロ協力、民主主義、人権などに加えて経済・貿易・エネルギー問題も議論され、その後2008年12月まで計6回開かれている。ただし、内容的にはそれほど成果があったわけではない。

