労働集約型産業にとって、働き手の確保は生命線。カギとなるのは「溢れるほどの労働者がいるかどうか」だ。工場がシャトルバスを走らせ、あちこちから労働者をかき集めなければならないようでは、生産は難しい。
小島衣料(本社:岐阜県岐阜市)のオーナー、小島正憲さんがダッカに工場を開設したのは2010年のことだ。バングラデシュを生産地として見込んだのは、まさしく「蟻集する労働者」がいるためだ。
筆者はダッカ市内から車をチャーターし、工場のあるガジプールに向かった。1時間半の道のりは、途中から農村風景に変わるが、それでも人の姿がまばらになることはない。
現地に到着したのはちょうど昼過ぎ。昼休みを終えて工場に戻る労働者たちが、何キロにもわたって道の両脇をゾロゾロと歩いているのが印象的だった。
人口以外のインフラは自力で備えられる
労働集約型産業にとって理想的なのは、「1平方キロメートル当たり100人以上の国」だと言われる。カンボジア、ミャンマー、インドネシアなどはポテンシャルがあるが、バングラデシュの「1000人以上」にはかなわない。しかも、バングラデシュ64県の中で人口が500万人を超える県は4県もある。
小島さんは、労働集約型産業の立地のために「まずその国の労働人口の密度を見る」ことの重要性を強調する。