南アフリカ共和国東岸の都市ダーバンにあるトヨタ自動車の工場でストライキが起き、10月1日から生産が一時ストップした。
結局、5.4%の賃上げに合意することで、生産は再開されたが、南アの鉱山では、待遇改善を求める違法ストが今年初めから多発しており、それが製造業にまで飛び火した形となったものだ。
アパルトヘイト終結以来の大惨事
今回、ことが大きくなったのは、英国資源大手ロンミンが保有するマリカナ・プラチナ鉱山で8月に起きた惨事の影響が大きい。
賃上げを求め始まった3000人規模のストが違法との解散勧告にも応じず、一部なたを手にしたデモ隊が警官隊と衝突。
そこで警官が発砲したことから、34人もの犠牲者(全期間を通し45人が死亡)を出すという、1994年のアパルトヘイト終結以来最悪の流血の惨事となったものである。
さらに、ストに参加していた鉱山労働者270人が殺人罪で起訴されたことで事態は混迷した。
「アパルトヘイト時代、黒人摘発に使われた法律」を適用したというのだ。この何とも理不尽な話に労働者の反発は強まり、ジェフ・ラデベ法相が介入し起訴はようやく取り下げられた。
こうした当局の対応を見れば、権威 対 既得権者に弄ばれている庶民、という構図が浮かび上がってくる。
アパルトヘイト撤廃時より拡大傾向にあると言われている格差の問題も根底にあるようだ。そして、そんな不可解な法律があるというのなら、アパルトヘイト時代には同じようなことが堂々「合法的」に行われていたということなのだろう。
その後も、労使交渉に失敗しても「中国に雇ってもらえばいい」などと一部急進派が語っている、との報道もあり、スト長期化への懸念は強まっていった。