「四分五裂」という言葉がある。『広辞苑』によれば、「いくつにも分裂すること。秩序なくさけ分かれること」とある。

 9月21日に野田佳彦首相が代表に再選された民主党代表選挙には、4人が立候補していた。26日に投票が行われる自民党総裁選には史上最多の5人が立候補している。両党を合わせれば、まさしく四分五裂の様相だ。三つ巴の戦いというのはあるが、四分五裂というのは、要するになんらのまとまりもないということである。

4人の立候補者が乱立した民主党の情けない事情

 まず民主党を見てみよう。野田首相の他に、原口一博元総務相、赤松広隆元農水相、鹿野道彦元農水相が立候補した。野田首相以外の3人の話を聞いても、何のメッセージも伝わってこなかった。首相になって何をやりたいのか、その意欲は露ほども伝わってこないのである。

 この3人は、野田首相のもとで小沢一郎氏をはじめ、多くの離党者を出したことを非難して、「党内融和」や「結束」を掲げていた。だったら答えは簡単だ。3人が立候補を取りやめ、野田首相のもとで一致結束することだ。そもそも「党内融和」などということは、外に向かって言うことではない。国民から見れば何の関係もないことだ。

 民主党関係者によれば、4人もの候補者が乱立したのには、2つの理由があるそうだ。

 1つは、自民党が総裁選挙で全国遊説やテレビ討論会を繰り広げるのに、民主党で代表選挙をやらなければ、自民党にマスコミを席捲(せっけん)されてしまい、次の総選挙でますます不利になってしまうこと。

 もう1つは、自分自身が小選挙区での当選が危うくなっているので、この機会に名を売っておきたいということだそうである。

 さもありなんと思う。何人かの民主党議員が「選挙の顔」になるとして、細野豪志環境相・原子力行政担当相に代表戦の出馬要請を行った。遅々として進まない復旧・復興の大きな責任を負っているのが細野大臣である。この人物を「選挙の顔」になるからとして、代表選への出馬要請をする民主党議員の無責任さとお粗末さには、あきれるほかない。こんな代表選に国民が関心を寄せないのは当然である。