連載「変化と進化を先読みする~メディアの未来」は、デジタル化とスマート化が加速する中、メディアおよびメディアビジネスはどう変化しようとしているのかリポートしています。
連載第10回は、メディアビジネスに「フリーミアム」は根づいたのか? それはメディアをどう変化させてきたのか、について論じます。
なぜ、いまフリーミアムなのでしょうか? 筆者の問題意識はこうです。
インターネットが普及を続けたこの約15年は、それまで強大な影響力を維持してきたメディア(新聞、雑誌、書籍、放送・・・)のあり方を根底から揺さぶり、次にその新たな未来像の描き換えを迫るものでした。
Webというオープンなプラットフォームを得て、一部のメディアはWebの構造に最適化を図ることで、それまでのメディア界の秩序を大きく変化させました。
成功事例を追いかけるように、Webメディアが次々と台頭し情報の供給サイクルはリアルタイムに近づき、“いつでも・どこでも”化する一方、誌代は広告収入を引き換えに無償とするビジネスモデルが圧倒的に普及したのです。
しかし、Webのそのような常識も曲がり角を迎えようとしています。
Webメディアの重要な収入源であり続けた広告市場の成長に、一部を除いては天井感が見えてきました。経済の低迷とも相まって広告予算の成長が減速しているのです。広告収入頼みでは高コストなメディア運営を支えきれない事態が訪れました。
このような背景から、本連載第2回『ペイウォールの向こうにメディアの未来はあるか?』で紹介したように、内外でWebメディアの有償化、「ペイウォール」化が勢いを得ていることも本連載の読者の間ではよく知られた状況です。
また、ソーシャルメディアとモバイルアプリという、Webの常識と異なる世界が急速に台頭していることもポイントです。特に後者、モバイルアプリは立ち上がり初期からユーザーへの課金の仕組みが整備されていることもあり、“無償”が当たり前のWeb的常識から、有償化もあり得る経済モデルへと、事業者の期待が高まっているのです。
Point:フリーミアムは、メディアを変えたか?
ところで、Webやモバイルアプリにおける有償化の波は、ビジネスとしてメディアに携わる筆者らにとっては朗報ですが、決して容易な転換ではありません。
そこに現れたまったく新しい概念が「フリーミアム」でした。
わが国でも2009年に出版されブームの火付け役となったのは、クリス・アンダーソン著『フリー~<無料>からお金を生みだす新戦略』でした。