最近の米株式市場の動きを総括しておきたい。5月26日、ニューヨークダウ工業株30種平均は9974.45ドルで取引を終了した。終値で1万ドル割れになったのは今年2月8日(9908.39ドル)以来。だが、翌27日には、ユーロ圏への証券投資見直し報道を否定する中国当局者コメントなどを材料にしながら買い戻され、前日比+284.54ドルの急反発となった。今年に入ってからでは5月10日(前日比+404.71ドル)に次ぐ大幅上昇である。この時点で市場の一部には、米国株は最悪期を脱したのではないかという楽観論が漂った。

 ニューヨークダウが終値で1万ドルを下回ったことで市場にいったん水準面での達成感が漂ったのは事実であろう。しかし、5月31日の米国・英国市場休場を前に、ショートカバーが株式やユーロについて行われやすかったという一時的な要因も考えられる。さらに、ユーロや株式を買い戻す材料になった下記のような各種要人発言は、決して「ユーロ圏への投資を積極化しよう」という意思表示ではなく、「現在よりも消極化しない」という建前の表明にすぎないと受け止められる。韓国銀行の担当者が今回指摘していたことだが、外貨準備に多額のユーロを保有しているにもかかわらず、ユーロの急落局面でユーロ売り材料になりかねないコメントを発するのは、自分で自分の首を絞めるようなものである。

◇中国国家外貨管理局(SAFE)「(中国が現在、ユーロ圏の債券の保有状況を見直しているとの英経済紙報道について)全く事実無根だ」

◇クウェート投資庁(KIA)「一部欧州諸国が直面する危機に対応し、KIAが欧州への投資や欧州でのプレゼンスを縮小することを検討しているとする地元紙の報道を否定する」

◇ロシア中央銀行イグナチェフ総裁「われわれは保守的で、少なくとも今後数カ月は外貨準備の構造を変えない。これについて誰とも議論していない」「ユーロはある方向、別の方向と動く。それに慣れるべきだろう」

◇韓国銀行(中央銀行)外貨準備運用部門責任者「各国中銀は、欧州通貨統合を依然として信用している」「(外貨準備多様化の方針は)変わらない」

 さらに、同じ5月27日に、ユーロ相場の下落を明示的に容認する当局者発言が以下のように複数出ていたことも見逃せない。ユーロ安と連動した米国株安は、今後も起こりやすい。

◆ノワイエ仏中銀総裁(ユーロ相場は長期的な平均に近づいていると指摘した上で)「明らかに現時点で一段と正常な範囲にあり、輸出という点でわれわれが恩恵を受けていることは間違いない」

◆ノボトニー・オーストリア中銀総裁「ユーロの上昇が経済の減速を招くとの懸念があったのは、さほど昔のことではない。今回の下落は明らかに(経済にとって)有益な動きであり、われわれの産業にとってマイナス要因とは受け止められないだろう」「米国がこの動きをいつまで容認するのかを見極めなければならないだろう」