なぜ日本の家電メーカーは「iPhone」を生み出すことができなかったのか。

 かつてアップル日本法人代表、米Apple Computer(現Apple)マーケティング担当バイスプレジデントを務めていた前刀禎明(さきとう・よしあき)氏は、著書『僕は、だれの真似もしない』で次のように記す。

僕は、だれの真似もしない』(前刀禎明著、アスコム、1400円、税別)

 <アップルの技術が抜きん出てすばらしく、ソニーやパナソニックのテクノロジーが劣っているわけではない>、だが<アップルは技術をまとめることで、形を変え、ルールも変え、インタフェースも変えてしまった>

 では、アップルはなぜその改革を成し遂げられたのか。 それは、「型」破りな発想で物事の本質を追い求めていく企業文化のたまものだった。

 <その発想を支えるのは、実は子どものような感覚です。五感と想像力を混ぜ合わせ、誰も見たことのない世界に飛ぶこと、その基礎となるのが、セルフ・イノベーションなのです>

 「セルフ・イノベーション」(自己革新)とは、常識や既存のルールに捉われず、五感をフル活用して想像力を膨らませ、自発的に行動するようになることを指す。前刀氏は、一人ひとりがセルフ・イノベーションを起こすことで、世の中が変わり、日本が変わると唱える。

 本書は、前刀氏がアップルをはじめとする様々な企業での体験を踏まえて執筆したセルフ・イノベーションの指南書である。セルフ・イノベーション実現のポイントを前刀氏に聞いた。

アップルを辞めた理由を一言で表すと

──前刀さんは、ご自身に「『誰の真似もせず、ただ変わり続ける』という意思がある」と書かれています。セルフ・イノベーションの実現には、積極的に変化していく気持ちが重要なのですね。

前刀禎明氏(以下、敬称略) 何が起きるか分からないから人生は楽しいんですよ。レールに乗ったら、次にどこに行くか分かっちゃってつまらないじゃないですか。