障害者を事業の中心従業者にしてリサイクル作業を請け負ったり、農産物の生産・販売を行ったりする企業「ソーシャルファーム」が、日本にも増えてきた。
ソーシャルファームはヨーロッパが発祥地だ。通常のビジネスモデルを採用し、製品やサービスを市場で販売して企業としての採算性を意図する。一企業なので、民間企業と勝負することが基本となる。
ソーシャルファームの産業分野はとても広いが、お洒落なデコレーションの1ブランドとして大成功していて、日本にも製品を出荷している「tät-tat(テート-タット)」の設立者夫妻に会うことができた。設立18年のtät-tatは、障害者とどのように歩んできたのだろうか。
洗練されたデザインが人気で、生産が追いつかない
tät-tatは紙や毛糸や木を使ったデコレーションおよび文具を作り続ける企業だ。スイスに本社を置いている。目下の商品数は80点と種類が豊富だ。
tät-tatを手にした人が、きっと必ず思うことは「シンプルだけど、愛らしくてぬくもりが伝わってくるな」ということだろう。モビールにしても、メモ帳やクリップやメッセージカードにしても、見ていると心がなごんでくる。だから、つい買いたくなってしまう。筆者もプレゼントや自分用に利用している。
スイス国内では、全国に500店舗以上を持つ老舗フェアトレードショップ、クラロを中心に売られていて、人々には馴染みがある。筆者の周りでもtät-tatを知っているという人は多い。
またパウル・クレーの美術館ツェントルム・パウル・クレーのショップなど、美術館でもtät-tatが買える。同社サイトでオンラインショップも展開している。
ほかのヨーロッパ諸国、米国、オーストラリア、日本でもtät-tatに出合える。日本では東京都写真美術館、東京の原美術館、名古屋市美術館、長崎県美術館、マルク・シャガールゆふいん金鱗湖美術館などでtät-tat商品11種を扱っている。
「国によって、商品の好みに差があるのがおもしろいですね。私たちもデザインを考えていく上で勉強になります。日本の人たちは可愛いらしいデザインが好きですね」
設立者のマルティッグ-イムホフ夫妻、妻のブリギットさんとご主人のベネディクトさんはそう説明する。tät-tat商品は2人が共同でデザインしている。
tät-tatの生産部門は、スイスやドイツの知的障害者施設や精神障害を持つ人たちのクリニックなどで、現在17施設と提携している。合わせて約450人が働いている。もちろん給与は支給している。