離婚によって失うものは、前回解説した「子供」だけではありません。子供以外にもたくさん失うものがあります。結婚期間が長ければ長いほど、失うものも増えていきます。失うものは有形資産と無形資産に分類できます。
有形資産の損失
まず、有形資産です。形としてあるもの。失うと明確に分かるものです。有形資産として挙げられるもののうち、離婚の意思決定に影響を与えるものは次の3つです。
第1に、離婚をするとすべての財産は折半になります。結婚後に貯めた預金、株券などの有価証券といった資産は半分ずつになるのは当然としても、前週でお話ししたお互いがもらえるはずの年金といったたぐいの資産も離婚時点で計算して折半することになります。
第2に、もし結婚後にマンションなり一軒家を購入した場合には、その資産も折半しますが、現実にマンションを折半することはできませんので、通常は売却することになります。
例えば5000万円で購入したマンションは、ローン分を差し引き、売却価格に基づいて折半することになるのですが、現実には居住年数に応じて資産価値は減少しているので、売却しても手元に残る現金はごくわずか、あったとしても半分ということです。
その場合に問題になるのは、家なりマンションを売却するとして、その後、夫婦が別々にどこに住むかということになります。
当然、居住したところから遠くに住みたいと思うでしょうし、同じように分譲マンションを購入したいとお互いが思うでしょうが、そのようなお金は持ち合わせていないというふうに考えるのが一般的でしょう。
従って分譲マンションは無理、となると、夫も妻もアパートかマンションを賃借して新しい生活に入るということになります。
さらに複雑なのは、子供がいて同居している場合です。子供は親権次第で、夫側になったり妻側になったりしますが、いずれの場合にも、いままで住んでいたところから異なる場所に引っ越すことになるので、転校問題が生じます。
「離婚が原因で転校?」。この事態はぜひ避けたいと思うに違いありません。しかし、もし同じ学校にとどまるにしても、その場合にはその場合で、学校での噂にもなることでしょうから、問題が厄介です。
第3に、夫の場合には、いままで会社からもらえていた扶養手当が原則ゼロになります。家族4人の典型的家庭(小学生の子供2人、親権は妻)の離婚、で計算すると、扶養手当は毎月数万円程度あったはずですので、その額がゼロになると大幅な収入減です。
自営業の人には影響ありませんが、サラリーマンには扶養手当の損失は大きいです。ただし、同居はしないが、養育費を支払う場合には扶養手当は継続されます。養育費については、次回にじっくりと解説します。