総務省が『平成24年度版 情報通信白書』を出版した。よくまあこれだけ調べたなと感心する。データ集として眺めるだけでも2895円の価値がある。早速購入した。

 しかし、分析結果に対する総務省の意見には、賛同できないものが多い。例えば、第2章「『スマート革命』が促すICT産業・社会の変革」中のトピック「ガラケーは『スマホ』に負けたのか?」では、以下のような主張を展開している(役人の書く文章は冗長で分かりにくいため、簡潔に要約した)。

ガラケーの負けを認めない総務省

(1)スマホが普及しているが、依然としてガラケーの世帯頬有率は90%程度あり、ガラケーのネット利用者も50%を超えている。つまり、依然としてガラケーは支持されている。

(2)2009~2011 年、日本でスマホは1.4倍になり、他国では2~4倍になった。この増大は、アプリによる影響が大きい。つまり、「ガラケーがスマホに『負けた』」のではなく、スマホが新市場を開拓したと見るべきだ。

(3)モバイルインターネットの先駆者はNTTドコモの「iモード」であり、Appleの「iPhone」はそれに追随した(真似た)。

(4)「ガラケーがスマホに『負けた』」のではなく、AppleやAndroidが成功したと見るべきである。なぜなら日本の携帯端末メーカーだけでなく、NokiaやRIM(ブラックベリー)なども大きくシェアを落としているからだ。

 総務省は以上のように言っている。結局、総務省は「スマホが爆発的に普及している」ことは認めつつも、「ガラケーは負けていない」という不思議な主張を展開しているのである。

 この論理はどこかで見たことがある。そう、日本半導体や電機産業のあのセリフだ。「日本は技術力では決して負けていない」

 それで「負けていない」はずの技術力を持っている日本はどうなってしまったのか? エルピーダメモリは倒産し、ルネサス エレクトロニクスは倒産寸前になり(危機はまだ続いている)、ソニー、シャープ、パナソニックは3社合計で1兆8000億円の大赤字を計上、すべて社長が交代して、どこも血眼になってリストラ(という名の解雇)に走っているじゃないか。

 潔く「ガラケーはスマホに負けました」と認めたらどうなのか。