中国の南シナ海支配が最終段階に入ってきた。6月21日、中国国務院は南シナ海の南沙・西沙・中沙諸島を合わせて「三沙市」として新たに行政組織を作り、海南省の下に置くことを発表した。
中国政府は、西沙諸島の最大の島「永興島」に市政府を設立し、7月23日には市長と市議を選出し南シナ海一帯の行政機構の整備に乗り出した。
西沙諸島には市政府と滑走路をつくった
7月19日に共産党中央軍事委員会が、新たに作られた「三沙市」に「三沙警備区」の設置を決定し、南シナ海の防衛体制を強化する姿勢を示している。
中国軍はこれまでにも軍事力を少しずつ強化しており、1998~99年に西沙諸島の永興島に滑走路を建設し、軍事基地として使用している。
中国軍の「警備区」は戦略上の要衝や大都市など重要な地域に設置されるのが通常で、「三沙警備区」が設置されたことは、南シナ海の今後の防衛態勢が格段に強化されることを意味している。
南沙諸島・西沙諸島はベトナム・フィリピンとの間で領土権の係争中であり、中沙諸島のスカロボー礁を巡ってはフィリピンとの間に対立が続いている最中であり、7月12日にはアセアン地域フォーラム(ARF)が開かれて、米国も参加し領有権争いの平和的な解決を目指した話し合いをしたばかりだった。
南シナ海の戦略的価値は大きく分けて2つある。その1つは豊富な海底資源であり、他の1つは、太平洋とインド洋を結ぶ海上交通の要衝としての価値である。
南シナ海周辺諸国、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアが鋭く対立しているのは、石油・天然ガス・レアメタルなどの海底資源の確保であり、特に南沙諸島には大規模な石油や天然ガス資源が眠っていると見られている。
この海域の海底資源採取の可能性が認識されるようになったのは、1960年代から70年代にかけてのことであり、じらい、各国間の対立が激しくなり、長い間領有権争いが続いてきた。
1994年国際海洋法条約が制定され、排他的経済水域(EEZ)が認められてからは、1つの島を領土にすれば、その周辺200海里(約370キロ)以内は、自国の排他的経済水域として、優先的に資源を開発する権利を得られることになり、領有権の争奪戦が激しくなっている。