世界最大の鳥ダチョウの新たな可能性が注目されている。
ダチョウの体内で作られた病原体への抗体が、インフルエンザや花粉症の予防、さらにはアトピー性皮膚炎(以下、「アトピー」)の緩和に役立つというのだ。
特にアトピー対策用に開発されたダチョウ抗体入り化粧品は、テレビの情報番組で取り上げられたこともあり、アトピーに悩む人たちが熱い関心を寄せている。
『ダチョウの卵で、人類を救います』は、ダチョウ抗体の研究者である京都府立大学教授の塚本康浩氏が、これまでの研究成果をまとめたもの。開発にまつわる数々の苦心が、ユーモラスな口調で語られている。
ダチョウ抗体研究の現状と将来性を、著者の塚本氏に聞いた。
免疫システムから生まれる分子
──著書の内容が大きな反響を呼んでいるそうですね。
塚本氏(以下、敬称略) テレビの情報番組で取り上げられた直後から、僕の研究室にも、大学の代表電話にも、ものすごい数の問い合わせの電話がかかってきました。アトピー対策の化粧品に関する問い合わせがほとんどですが、激励の電話もあります。
アトピーに悩まされている方が、こちらの想像以上にずっと多いという印象です。年配の方の電話が多く、「孫のアトピーが心配なので」と相談される。アトピーは、本人だけでなく、家族全体の問題なんだな、と実感しました。
──そもそも抗体とはなんでしょう。
塚本 体の免疫システムによって作られるもので、体内に入ってきた異物を攻撃し、無力化しようとする分子です。異物を「抗原」と呼び、これに抵抗する分子を「抗体」と呼びます。