日本の企業は、マーケティングの執行体制が欧米に比べて整備されていないということがよく言われる。その象徴として「CMO(最高マーケティング責任者)がいない」ということが取り沙汰される。

フェイスブック、アプリ紹介「アップセンター」開始

米フェイスブックは今年2月、リーバイスのCMOだったレベッカ・ヴァン・ダイク氏をマーケティングのトップとして引き抜いた〔AFPBB News

 そもそも「マーケティング」という機能の位置づけすらしっかりしていない日本企業ではあるが、欧米流の豪腕CMOを登用すればよいかというと必ずしもそうではないように思う。

 よく使われるデービッド・アーカーの「CMOの5つの機能」は次のとおりだ。

1. チームをつくり人脈をつなぐファシリテーター
2. マーケティングの社内コンサルタント
3. 調査研究などサービスの提供者
4. 開発にかかわる戦略的パートナー
5. 開発・実行に責任を持つ戦略のキャプテン

 確かにそうなんだろうと思うが、ではこんなことを1人できる人がいるものだろうか。社内にはいないとなって外部から登用して新しい組織をつくった場合、日本の企業文化から考えると、なかなか周りが言うことを聞いてくれるかどうか難しいのではないだろうか。

 中規模の会社なら社長直轄プロジェクトか、社長がCMOを兼ねるくらいのことをしないと機能しないと思われる。

 日本企業の場合、CMOという「従来の縦割り組織に横串を刺して新しいマーケティング時代に横断的な機能をする」役割を導入するには、コツが要る。

 まずは、ボトムアップとトップダウンの両立である。そのために一番重要なことは、「ミドル層の十分な理解とやる気」である。ミドル層といっても50歳前後であれば、デジタルマーケティングやソーシャルメディアへの認識が十分できるはずだ。

 おそらくどこの会社も現場は分かっている。適応能力も高い。ただ能力十分な現場を機能させられるかどうかも、ミドル層が理解と体を張る覚悟を示せるかどうかで決まる。

 ミドル層が理解し、覚悟が決まれば、あとはトップにボタンを押させることだ。これは外部の力を借りてもいい。また説得には組織を超えての連帯も必要だろう。ここまでくれば、むしろ新たな動きに合流しないリスクの方が高い。そう考えるのが普通で、トップに交渉するのに組織横断で連帯して臨むとよい。

 そのためには、組織横断的にキーマンが集まる会議体をつくり利用することだ。

 新しいマーケティングの計画と実行には、こうした会議体をスタート地点にする手段がある。まずは複数の重要なセクションが集まってCMO機能を分解し、確実に担う者を決める。1人でできないことは、集団でこなす。