NAB Show 2012 の基調講演で、ゴードン・スミス会長は「ウルトラHD(スーパーハイビジョン)とモバイル放送」に力を入れると述べた。

 前回の記事で紹介した通り、「放送業界に10年後のビジョンはあるのか?」と問うたスミス会長にとって、既得権益の死守だけでは放送業界が廃れていくという危機感を持っているようだ。

 そこで、今回は今年の NAB Show で提示された放送技術の方向性を3点紹介したい。詳細は、『明日のメディア:デジタル -NAB編-』で紹介しているので、イズメディア・モール(こちらをクリック)からご購入されたい。

次世代地デジ規格の動き「FOB TV」

FOB TV のプレゼン資料(著者撮影、以下同)
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 FOB TV(Future of Broadcast Television)は、現在3つに分かれている地デジ放送規格を次世代で統一する動きである。昨年の11月に、第1回 FOB TV 会議が上海で開催された。

 現在、地デジ規格は、米国(ATSC)、欧州(DVB)、日本(ISDB)があり、中国もDTMBという独自の地デジ規格を採用し、既に1.5億人ユーザーがいる。

 今後地デジが普及する新興国は、この4規格のうちどれかを使用する。

 テレビ市場が成長している間は、規格競争でパイを分け合ってもビジネスが成立していた。しかし、現状の環境変化を反映しているのか、4つの規格団体が共同で次世代規格を標準化することにした。

 FOB TV の目的は、(1)放送局やメーカーと放送のエコシステムの構築、(2)インターネットとの連携、などとなっている。

 ただ、セッションで発表されたコンセプトは、ソーシャルやアドテクノロジーといったインターネットの流行を表面的に取り入れた感が強く、斬新なものではなかった。現段階では技術的な側面が先行しているが、今後は消費者ニーズなど社会的な視点も踏まえた議論が必要となろう。

スーパーハイビジョンは何のためにあるのか

 FOB TV のセッションでは、NHKが技術戦略を発表していた。2年後にネット連携サービスの「Hybridcast(ハイブリッドキャスト)」を開始、10年後にスーパーハイビジョンを開始するというものだ。