かつてのお家芸だったテレビやクルマの国際シェア低下に歯止めがかからない日本企業・・・。当コラムでは、日本勢の凋落について様々な機会でそのデータを提示してきた。

 では、日本の企業はもはや全滅なのか。答えは明確に「否」である。電子部品などの分野では、世界市場で圧倒的なシェアを誇る日本企業はいくつもある。地味ではあるが、製品の品質を徹底的に磨き上げることで差別化を図り、韓国や台湾、中国の新興企業との競争に打ち勝ったオンリーワン企業が大半だ。筆者は、こうした強い企業をより強くしていく施策が必要と見る。

「iPhone」の多層プリント基板を製造

 「あの会社の技術がなければ、『iPhone』は分厚い端末のままだった」──。過日、私が取材していると、旧知のアナリストがデスクの上に置いたiPhoneを指した。

 アップルによれば、「iPhone4s」の厚さは9.3ミリ。この薄さで通話ができ、本が読め、映画の視聴も可能だ。当然のことながら、分厚ければとてもスマートフォンとは言えない。

 このアナリストが指摘した「あの会社」とは、岐阜県大垣市に本社を構える電子部品メーカーのイビデン。プリント基板やICパッケージを製造する大手部品会社だ。

 先に触れた“厚さ”、いや、iPhoneのウリの1つであるその薄さは、同社の優れた技術によって実現されているのだ。

 「PCB(プリント基板)配線分野では、イビデンはiPhoneやiPadのトップ部品供給メーカー」(先のアナリスト)となっている。アップルの旗艦商品の中には、イビデンが製造した10層以上の超精密多層プリント基板(10層Any Layer基板)が組み込まれている。

 ご多分にもれず、このような基板はここ10年程の間に韓国と台湾企業の猛追を受けた商品だ。当初は、テレビの液晶パネルのようにコモディティ化の波に飲まれてアドバンテージを失うだろうと予想する向きも多かった。だが、「特にハイエンド商品の精度は海外メーカーの追随を許さず、(アップルなどの製品に関しては)ほぼ独占状態」(同)という。