昨年度テレビメーカーが巨額の赤字を出すほどの苦境に陥ってしまった要因は、放送局やテレビメーカー自身の「デジタル」への認識が、消費者のそれとズレていたからではないだろうか。

テレビメーカーの「顧客」は消費者か、それとも放送業界か

 放送にとって「デジタル化」は、番組送出手段の技術的な変化であるしかし、消費者にとって「デジタル」とは、「オープン」とか「フリー」といったサービスの変化であろう。

 「デジタル」とは「インターネット」とほぼ同じ意味であり、好きな番組を好きなときに見るといったサービスを想起する。

 「地デジ移行」を議論し始めた1990年代は、誰もインターネットがこれほど普及するとは想像がつかなかった。実際「地デジ移行」が完了するまでの10年間で、国内のインターネット利用者は5000万件、携帯電話加入者は7000万件増え、加入者2000万人を超えるソーシャルメディアが成立した。

 消費者はこうしたデジタルツールを利用し、インタラクティブ、シェアなどサービスの質的な変化を体験した。

 この「質」的な変化に対し、放送のデジタル化が「手段」の変化に留まることを、放送側は知りつつ知らぬフリをしたのか、自分たちの優位性を確信していたのか、結果的にテレビ受像機や送出設備の変化を以て、放送のデジタル化が完了した。

4月にラスベガスで開催されたNAB2012のセッションの様子(『明日のメディア:デジタル―NAB2012レポート』より)

 さらに、NAB2012やNHK技研公開を見ると、放送業界は次世代のテーマに現在の16倍も高精細な Ultra HDTV(スーパーハイビジョン)の映像送出、再現を掲げている。

 規制で守られた放送業界の技術発展は、この地デジ移行で分かる通り、準備期間が長過ぎ、達成されたときは、世の中が変わってしまっている。

 テレビメーカーが、その放送業界との付き合いを重視するあまり、消費者の支持を失っては経営が成り立たない。また、視野が放送の領域内だけに留まっていても消費者ニーズを汲み取れない。

 放送とテレビの関係性を考え直すことが、テレビメーカーにとって今後重要なポイントとなろう。

「スマートホーム」で勝負する韓国メーカー

 韓国のサムスン電子やLGは「スマートテレビ」で、あっさりと放送との関係性を清算するかのように、インターネット的なデジタル機能を提供した。そして、彼らは今年のCESでは既にテレビに力を入れておらず、「スマートホーム」をアピールしていた。さらに一歩先を行っている。