「100万ドル以上収入のある者は少なくとも30%の税金を払うべきだ」という富裕層への課税強化を目指した「バフェット・ルール」法案が、4月16日、共和党の反対のため米国上院で否決された。

 バラク・オバマ大統領は「上院共和党は中間層を犠牲にして富裕層の優遇税制を守った」と述べているが、2010年には金持ち優遇の「ブッシュ減税」の延長を渋々認めており、「change」も腰砕け状態にあるようだ。

格差はつくられた

ポール・クルーグマン著『格差はつくられた

 1980年代の共和党ロナルド・レーガン政権に始まる「第2の金ぴか時代」。

 こうした金持ち優位の制度によって米国の格差社会が「つくられた」というのが、2008年ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のポール・クルーグマン教授。

 その前年脱稿した「格差はつくられた」での主張である。

 「金ぴか時代、金メッキ時代(gilded era)」とは、「トム・ソーヤーの冒険」でお馴染みのマーク・トウェインの小説に由来する表現で、一般に、南北戦争後から1890年代あたりまでを指している。

 長きにわたる共和党政権下、保護貿易政策が浸透し産業革命の成熟とあいまって、瞬く間に世界一の工業国にまで上り詰める急成長を遂げていく時期のことである。

 鉄鋼王アンドリュー・カーネギー、鉄道王コーネリアス・ヴァンダービルト、鉱山王マイアー・グッゲンハイムといった名だたる大資本家、大富豪が生み出されていった資本主義の急伸期で、1870年代のニューヨーク「上流社会」を舞台にした『エイジ・オブ・イノセンス』(1993)でうかがえるそのきらびやかな生活ぶりはまさに「金ぴか」である。

 その一方で、鉄道を通して漸くつながるようになった西部には、まだフロンティアが残っており、開拓民は苦戦奮闘中。無法者が闊歩する数多くの西部劇の舞台となったのもこの頃のことである。

 工場、鉄道、鉱山といったところで働く労働者に対する処遇も極めて劣悪で、その後大資本家たちは、大学や美術館などを創設、慈善家として名を馳せるようになるが、その精神とは程遠い酷い仕打ちをしていた。