初めまして。本連載では目覚ましく変化、進展するメディアの現在進行形をいくつかの注目すべきキーワードを手がかりに追っていきたいと思います。

 テーマは「デジタルメディア、その変化と進化の先を読む」です。

 早速旬の話題を紹介したいのですが、その前に筆者自身の立ち位置を述べておきましょう。筆者は過去十数年、デジタル専業のメディア事業の立ち上げ(起業)、そして経営・運営に携わってきました。

 現在は、そのメディア事業の運営を離れ、メディアプローブでメディア事業を支援する新たな技術基盤の確立と、一般ユーザー向けモバイルソフトウエア製品の開発に携わっています。

 メディアビジネスのインサイドとアウトサイドから、いまメディアをめぐって起きている注目の事象に目を向けていきます。

今回の注目ポイント:パーソナライゼーションもしくはフィルターバブル

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デジタル技術でメディアは「マス」から「パーソナル」へ〔AFPBB News

 「パーソナライゼーション」は、デジタルメディア草創期から長く夢見られてきた技術です。一言で表すなら「自分専用に情報を届ける仕組み」です。

 インターネットがここまで劇的な発展を遂げる以前、メディアは多数の読者や視聴者に効率的に情報を届けることに最適化してきました。

 資本力を誇る大手新聞社なら自社専用に高速輪転機やトラック配送網を保有することを競ってきたものです(現在でも、新聞社サイトの中を探せば大規模な設備を誇らしげに語るPRページを見つけることもできるはずです)。

 しかし、1990年代後半以降、いかにして情報を一人ひとりに最適化して届けるかが重要なキーワードへと転じています。“マスコミの危機”という話題もまた、このような時代の動きとどこかで通じ合っているのかもしれません。

 メディアの近未来を語るのに見逃せないキーワードが、パーソナライゼーションですが、その光と影を端的に伝える秀逸なショートフィルムをまず最初に紹介しておきましょう。

EPIC 2014 (日本語字幕版 8分56秒)

 2004年に2人のジャーナリストによって公開された本作は、非常に高品質な作品です。2014年という未来からインターネットとメディアの歴史を振り返るという設定で、メディア人にとっては今もなお衝撃的な内容です。

 アマゾンとグーグルが合併し「グーグルゾン」が誕生、消費者の好み・欲求を技術的に掌握しきるのを通じて、既存メディアの存在価値を追い詰めていく・・・という筋書き。

 この中心テーマがパーソナライゼーションなのです。