抜く前に知っておきたいコルク栓の秘密

男と女のワイン学(レッスン10)

2012.04.17(Tue)平野 美穂

 ブショネの問題を解決すべく登場したのがアルミ製のスクリューキャップや、スパークリングワインに使われるプラスチックキャップです。

 以前は安物ワインに使用されているイメージが強かったのですが、現在、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカで生産されるワインの70%以上はスクリュータイプとなっています。

 ブショネの心配もなく、開けるのが楽で、持ち運びもしやすい新しいキャップは瞬く間に世界中に浸透し、今やワインの歴史に新たな1ページを刻もうとしています。ワイン文化圏ではなかった地域で新しいワイン消費者が増えているのは、スクリューキャップの貢献によるところが大きいのです。

熟成を楽しむためのコルク栓

 新大陸と言われる先の4カ国でコルク栓を使わないようになったのは、ブショネ対策だけが原因ではありません。

 地中海西側で生産されるコルク材。輸入するだけでも大変なコストがかかるからです。

 もう1点、新大陸でスクリュータイプが重宝される理由として、早く飲むタイプのワイン生産が多いことも挙げられます。

 ワインの熟成には微量の酸素が必要なため、完全密閉されたスクリュー栓では、瓶詰めの段階より美味しくすることは難しいのです。長期熟成を要する高級ワインには、どこのワインにもコルク栓が使用されています。ワインの熟成が楽しめるようになったのは、コルク栓が発明されてからなのです。

 ワインの熟成を楽しむヨーロッパ人がコルク栓を愛して病まないのは、コルクのエコロジーな側面にも理由があります。

 コルクは9年に1度樹皮を剥いて収穫しますが、樹木を切り倒すことはありません。地中海沿岸に生息しているコルク林は、全体で年間1400万トンの二酸化炭素を吸収していると言われます。防砂林や防風林としても植樹され、砂漠化が進むこの地域の防波堤の役割も果たしています。

 イベリア半島では、コルク樫のドングリを主食にする高級食材のイベリコ豚が有名ですが、コルク栓と生ハムが同じ場所で生産されていることはほとんど知られていません。

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