先月、経済産業省より『第41回海外事業活動基本調査結果概要-平成22(2010)年度実績-』が発表された。
それによると、2010年度末時点の日本の海外現地法人数は1万8599社となり、うちアジアが1万1497社と全地域の6割強。中国は5565社(全体比29.9%)で、アジア全体の5割を占めた。
国際協力銀行の『我が国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告・2011年(PDF)』によれば、2010年度の日本の製造業の海外生産比率は過去最高の33.3%となった。
さらに、急激な円高、東日本大震災などの影響により、新興アジアを中心として海外事業展開が加速している。
新興アジアビジネスに必要な「智恵」に欠ける日本人ビジネスマン
このように、今、多くの日本企業や、そこに勤める日本人ビジネスマンが海を渡っている。その主な目的地となる新興アジア諸国は多様な民族・国家の集まりだが、経済的には1つの塊にまとまる方向にあり、日本人にとってアジア全体を俯瞰する視点がますます重要となっている。
経験が長い国でその国に対する熱い思いを持ってローカルに活躍するのも大切だが、同時に客観的な観点からクロスボーダーな視座を持つことも重要だ。
しかし、新興アジアビジネスの現場を見ると、アジア域内で新プロジェクトを立ち上げようとする日本人ビジネスマンは、現地人脈が乏しいために孤軍奮闘せざるを得ない状況に陥りがちだ。
また、日本人ビジネスマンにはアジア異文化ビジネスに必要な「智恵」やクロスボーダー仕事術のスキルが不足しているように見える。
アジア現地事業のための業界リサーチの難しさ、異文化企業とのコミュニケーションギャップ(言語、ビジネスカルチャー、倫理観、ビジネス慣習、マネジメントスタイルなどの違いから来る相互不理解)、現地パートナー企業選定判断における不安感、現地ビジネスローや会計・税務に関する理解不足、現地資金調達の難しさなど、多くの壁に突き当たり、新興アジア諸国でのスムーズな事業展開は決して容易ではない。
新興アジアビジネスに必要不可欠な「智恵」を誰からも教えてもらえないまま、日本人ビジネスマンは同じような失敗や苦労をアジア各国で繰り返しているのではないだろうか。
本稿では、新興アジア諸国を念頭に置きつつ、日本人ビジネスマンがクロスボーダーな仕事を行ううえで必要な要素は何か考えてみたい。