3月15日の拙論で、東日本大震災救援活動から学び取り将来に生かすべき軍事的教訓の1つとして、「日本自前の併用戦能力(amphibious capability)構築の必要性」を指摘した。

 ただし、併用戦能力を構築するといっても、自衛隊全体(陸自の大部分・海自の一部・空自の一部)に併用戦能力を持たせるという大規模なものから、島嶼防衛戦能力を持っていると誤解されている西部普通科方面連隊のような小規模な部隊を想定して構築することまで、様々なオプションが“構想”としては考えうる。

 (併用戦とは“海+空+陸”の軍事能力を“併用”する能力である以上、海軍的要素や航空部隊を伴わずに陸上戦闘部隊だけでは絶対に“併用戦”能力とは言えない)

 そこで、せっかくの教訓が尻切れトンボに終わってしまわないためにも、併用戦のエキスパートであるアメリカ海兵隊や海軍関係者たちの専門的知見ならびに併用戦理論から導き出した「日本にとって必要な併用戦能力」の“概要のサワリ”と、このような構想の“大前提となっている国際的常識”を紹介してみよう。

 (なお、本稿で紹介する日本が持つべき併用戦能力に関する議論は、アメリカ海兵隊やアメリカ海軍の見解から全く独立した個々人の分析や見解であり、本稿に記載した内容はあくまで筆者の見解である)

いつまでも“コバンザメ”国家でいいのか?

 前回の拙論でも触れたように、日本にも併用戦能力が存在すべきであると考えているアメリカ海兵隊や海軍関係者は少なくない。

 もっとも、「我々(アメリカ海兵隊とアメリカ海軍)が沖縄をはじめ日本に駐屯しているのであるから、日本が無理してまで併用戦能力を構築する必要はない」と考える人々もいないではない。ただし、後者の意見は一時日本で取りざたされた“ビンの蓋論”に立脚しているわけではなく、自衛隊が置かれている現状や防衛省をはじめとする日本政府や国会の軍事的センスから判断して「日本が自前の併用戦能力を構築することなど不可能に近い」という悲観的推察に基づいている。

 一方、筆者も含めてだが、日本は自前の併用戦能力を保持すべきであると考える人々は、「いつまでもアメリカ海兵隊に頼り切っているわけにはいかないだろう」という考えを持っている場合が多い。

 そのような意見の根拠の1つとして、次のような政略的指摘が存在することを紹介しておきたい。