週刊NY生活 2012年3月10日387号

 福島第一原発事故の災害援助や復興の専門家、原発作業員がニューヨーク近郊インディアンポイント原発反対活動グループの招きで来米し4日と5日、ニューヨーク近郊で集会に参加した。

 この機会に日本人コミュニティー向けにも福島の現状を伝えようと、テムラク歩美さん(ピース・アクション・グリニッチ代表)とタナカ有美さん(NY平和映画祭主宰)、マー・クリエーションが主催し7日夜、「命の叫び~福島の今を伝える」と題した講演会が開かれた。

天野和彦さん(右)と北島教行さん(左)

 福島県職員で福島大学災害復興研究所研究員の天野和彦さん=写真右=と、福島第一・第二原発作業員の北島教行さん=写真左=が体験を語った。

 天野さんは、2000人以上が暮らした避難所の県庁派遣責任者として、上からの管理ではなく交流と自治を形成していった過程を涙ぐみながら説明した。

 活動の様子を記した『生きている生きてゆく:ビッグパレットふくしま避難所記』(アム・プロモーション刊)の英訳ができたことも紹介された(英訳ダウンロード)。

 北島さんは、原発反対運動や緊急支援をした後に、昨年9月から福島原発収束作業員として働く。その心境や極めて高い数値の被曝状況を淡々と語り、「低賃金で過酷な労働条件で働く作業員がいることを忘れないでほしい」と訴えた。

 秘密厳守の作業内容を今回ニューヨークで発表したために失職の危険もあるが、帰国後は原発労働者の組合設立を進める意向であると話した。

 両氏とも、物資や義援金より「知ってもらうこと」が大切と力説し、参加者が聞いたことを周囲に伝えていくことも意味があると強調した。また原発事故は津波や地震がなくても起こり得る身近な問題であるとし、インディアンポイント原子力発電所が近いニューヨーク市民の問題意識を促した。

(小味かおる、写真も)

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