この日をどのように迎えて送るのか。世界中のどこに住んでいようとも、大震災から1年のこの日に寄せる思いには日本人として格別のものがある。

 3月11日日曜の朝、オレンジ色の街灯がともるまだ夜道としか言えないひっそりと静まり返った通りをわたしは歩いていた。やはり在仏歴が10年以上になる友人とふたり、トロカデロのシャイヨー宮広場に向かっている。

追悼集会主催者代表としてスピーチをする高田賢三氏(左) (筆者撮影、以下同)

 セーヌ河をはさんでエッフェル塔を真正面に見晴らすその場所へ着くまでのあいだ、ほとんど人影を見ることはなかったが、たどりついた目的地にはすでにたくさんの人が集っていた。

 広場の中央には、暗がりにぼんやりと浮かびあがるような白い花の祭壇。それは東日本大震災の追悼集会のためのもの。

 パリを象徴するこの場所で、犠牲者の追悼と復興への祈りを込めた献花が行われる。企画したのは、フランス在住邦人有志の方々。世界的なファッションデザイナー、高田賢三氏が代表として名を連ねている。

献花のために、シャイヨー宮広場に詰めかけた人々

 祖国の未曾有の事態に、遠く離れたところでただ見守るしかできない無力感に打ちひしがれたこと。被災した方々が気丈にそれに耐え、生きていこうとする姿に、人間とはこうも強くなれるのだと逆に勇気づけられる思いだったこと。そして、心からの追悼と復興への願い・・・。

 献花に先駆けて、高田氏が発したそれらの言葉は、集った人々の気持ちをまさに代弁してくれるもの。