内閣府経済社会総合研究所が毎年実施している「企業行動に関するアンケート調査」の2009年度・第2次集計部分が、5月11日に公表された。「現下の収益環境は厳しいが、企業にとっては、中長期的な成長戦略を見直す機会であると考えられる。企業はこれまでの自らの改革をどのように評価し、また、今後の戦略をどのように考えているのかについて調査した」もので、調査基準日は2010年1月15日、調査票回収期間は2009年12月9日~2010年2月8日で、上場企業2457社のうち1032社が回答した。

 今回の2009年度調査結果から浮かび上がるのは、産業の「空洞化」が今後ますます進展しそうな雲行きだということである。

 今後の戦略として、企業は何を重視しようとしているのだろうか。

 「個別戦略」について、強化するとした企業の割合がトップだったのは、容易に想像がつく通り、「海外需要の取り込み」(55.9%)である。次が「新商品・サービスの開発」(46.6%)。「国内需要の取り込み」は3番目(33.7%)。以下、「製造・事務等の効率化」(30.0%)、「流通・販売方法の見直し」(27.2%)、「調達先の見直し」(24.3%)となった。

 成長性の高い海外需要に企業が目を向けており、次が付加価値の高い商品・サービスの提供に向けた努力。人口動態からみてパイ縮小の可能性が高く、慢性的な過少需要・過剰供給構造ゆえに価格引き下げの体力勝負に陥りやすい国内需要を取り込むことの優先度が、もはや決して高くないことが確認される。

 海外現地生産を行う企業数の割合(製造業全体)は、2008年度実績が67.1%、2009年度実績見込みが67.5%、2014年度見通しが67.2%で、大きな動きはない。しかし、生産高で見た海外現地生産比率(製造業全体・実数値平均)は、2008年度実績が17.4%、2009年度実績見込みが17.8%、2014年度見通しが20.1%で、上昇していく方向である。

 製造業における生産工程の中長期的な展開スタンスを見ると、海外展開を「拡大・強化する」とした企業が55.7%で、半数を超えた。一方、国内については「維持する」(64.9%)が多数派で、「縮小・撤退する」(13.3%)が、「拡大・強化する」(13.1%)を若干上回るという、実に厳しい結果になった。

 さらに、今回の調査で特筆すべきは、日本企業にとってのアジアなど海外が、低コストの生産拠点というよりも、有望であるため進出すべき市場としての性格を着実に濃くしていることである。

 海外に進出する理由(3つまでの複数回答)を見ると、「現地・進出先近隣国の需要の拡大が見込まれる」(77.0%)が突出して多い。次が「労働力コストが安い」(45.3%)。以下、「現地の顧客ニーズに応じた対応が可能」(42.6%)、「親会社・取引先等の進出」(28.5%)、「資材・原材料等のコストが低い」(27.1%)などとなっている。