シェールガスの採掘方法が米国で確立され、利用可能な天然ガス埋蔵量が飛躍的に増加したのは、脱原発にちょっと明るいニュースである。だが、CO2排出問題、地球温暖化への影響は避けられない。
また電気代の高騰も甘受しなければならないだろう。東電は近々、大口契約者から15~20%値上げするという。一般家庭用の値上げも時間の問題だ。
値上げを抑えるため東電を国有化したところで、経費高騰分は税金から投入されるだけであり、そのツケは早晩、国民に跳ね返ってくる。
原発再稼働に反対する人は、「再生可能エネルギーの増加」「節電」の具体案を提示したうえで、「CO2排出増、電気料金値上げはやむを得ない」と付け加えて、ようやく責任ある意見となり、議論の俎上に載る。
ニューハンプシャー州に州税がない理由
もう15年以上前になるが、米国マサチューセッツ州にある空軍基地に出張した時のことだ。帰国に際し、買い物をしたいと空軍将校に言ったら、隣のニューハンプシャー州に車で連れていってくれた。
なぜわざわざニューハンプシャー州まで行くのかと聞いたら、ニューハンプシャー州は州税(消費税)がないという。
将校の説明はこうだった。ニューハンプシャー州では、住民投票で州税廃止を決めた。その財源をひねり出すため、消防署を廃止したという。「州税なし」という「受益」の代わりに、「火事になっても自分で消火しろ」という「負担」を州民投票で決めたのだ。
耳に痛い「負担」を甘受したうえで、州民が選択したのである。なるほど、これが成熟した民主主義かと深く感心したことを覚えている。
後日談だが、3年前、在日米軍司令官に「ニューハンプシャー州は今でも消防署はないのか」と聞いたら、「人はいないが消防車は置くようになった」と答えてくれた。
「脱原発」も結構だが、それに伴う「負担」を明らかにし、これを承知のうえで主張しなければ無責任の誹りは免れない。もちろん、原発推進派も同じだ。
