元旦の新聞紙面を見比べると、原発関係の2つの大きなニュースが目を引いた。ともに一連の日本の原子力政策のプロセスに疑問を投げかける結果となっている。
朝日新聞は1面のトップで「安全委24人に8500万円 06~10年度寄付 原子力業界から」という見出しで、原子力安全委員会の委員が原子力業界から寄付を受けていた事実を報じた。
同委員会は、福島第一原発の事故後、組織のあり方が問われてきたが、内閣府に所属し本来は中立的立ち場で行政機関や電力事業者を指導する役割を担う。
記事は朝日新聞の独自調査の結果として、この安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員89人のうち、班目春樹委員長を含む24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受け、このうち11人は原発メーカーや審査対象となる電力会社などからも受け取っていたことを明らかにしている。
寄付をした企業、業界団体を見ると、安全委員会の審査対象企業としては北海道電力ほか数社、原発メーカーでは三菱重工業や日立GEニュークリア・エナジー、このほか社団法人日本原子力産業協会や電力会社、原発メーカーの関連企業などとなっている。
寄付は研究助成の名目で行われるが使途についての報告義務はない。寄付する側は、寄付による委員への影響力を否定、また安全委員会事務局では、「審査する事業者と直接的な関係のある委員は審査メンバーにならないようにしてきた」と説明している。
一方寄付を受けた委員も寄付の審査への影響を否定しているが、取材に対して「多忙につき答えられない」など、事の重要性を理解していないと思われても仕方のない委員もいる。
こうした事実について、記事は「原発審査 曇る中立性」(社会面)と書いているが、同じような疑念を抱く人は少なくないはずだ。個々の原発審査とは関係がなくても原発計画そのものについての議論と個々の事例は切り離すことはできない点からも関連ありと考えられるのは言うまでもない。
公正・公平さを欠いた政策決定
毎日新聞は、同じく元日の1面トップで「核燃直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示 現経産審議官 再処理策を維持」という見出しで、使用済み核燃料の直接処分のコスト試算が隠蔽されていたことを明らかにしている。
国が進める使用済み核燃料の再処理については、その是非について議論があり、直接処分のコストが再処理より安価であることが判明すれば、国策である再処理に影響が出ると考えられるという背景が事の重要性を示している。
記事によれば、使用済み核燃料をそのまま捨てる直接処分のコスト試算を通産省(当時)から委託された財団法人「原子力環境整備センター」(現原子力環境整備促進・資金管理センター)は、1998年にその額を4兆2000億から6兆1000億円と算定した。この額は、青森県六ヶ所村の再処理工場の稼働で生じる費用約19兆円の4分の1から3分の1以下となる。