【お断り】JBpressのメールマガジン「Business Agenda」が2010年1~3月に連載した「私のメディア活用法」から抜粋し、編集したものです。

斉藤惇・東京証券取引所グループ社長
私のメディア活用法(5)

斉藤 惇氏(さいとう・あつし)
1963年慶大商卒業 野村證券入社後、副社長などを歴任 2003年産業再生機構社長 2007年6月東京証券取引所社長 同年9月東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長(撮影・前田せいめい)

 各メディアは兜町担当記者を1~2年で代えないでほしい。この世界をある程度吸収するには10年ぐらいかかる。商品だとか、法律だとか、世界がどうなっているか・・・。正直言うと、(着任から)1~2カ月でぱっと記事が書けるはずがない。

 (取材対象となる)私たちがストレートにモノを言えず、意味深長に接しているのに、(記者が)十分吸収しないまま記事になっているケースが多い。失礼だが、これでは日本のリテラシーは向上しない。もちろん、ベテランで優秀な記者もいる。経験期間だけではないが・・・

 株式の世界には、徒弟制度みたいなところがある。株価が上がったり下がったり、出来高がものすごく増えたり、減ったりとか。色々なことを経験して初めて「ああ、こういうことかな」と分かるはずだ。

 もし記者に経験がないのであれば、そうした経験をした人はたくさんいるのだから、そういう人と一生懸命に話をして記事を書いたらよいと思う。

 (メディアも)売れなければいけないのは分かるが、面白おかしいことと重要ということは別だ。面白くないかもしれないが、かなり重要で「これは国民に知ってほしい」という真実が存在する。面白いことには(メディアは)わーっと行くのだけど。

 例えば、(2009年12月の大納会で)私が(プロゴルファーの)石川遼君と並ぶと、わーっとカメラも来てくれ、それは大変ありがたい。しかし、それが主ではない。石川君に株を語ってもらえればよいのだが(笑)