週刊NY生活  12月17日 377号より

俳句が道路標識に NY市内の交差点
異色の交通安全キャンペーン 市民の話題に

俳句を使った道路標識(ミッドタウンで、山越晃撮影)

 ニューヨーク市交通局が日本古来の俳句を用いた交通安全キャンペーンを11月29日から実施している。俳句とイラストによるサインは市内5区12か所の交差点付近など人目に付きやすい場所に貼られている。

 「Please stop on the red Or you might just end up dead And then go on green(赤信号では止まって 死を避けたいなら 青信号で渡ろう)」

 「Sending you a text Directions to my next crash Would you like to come?(運転中の携帯メール送信先は 交通事故にもなりうる それでもいいのか?)」

 など、俳人や一般人による作品は125句におよぶ。英語俳句は、日本特有の5・7・5のリズムにのった定型詩とは異なり、短文を三行に分けた句が多い。

 実施の背景には、近年の事故原因が運転者側だけでなく、携帯電話など電子端末機器の使用に気を取られ赤信号の交差点に進入した歩行者側に起因したケースが増加傾向にあることをうけ、交通安全をより目立つ形で訴える手段として俳句が選ばれた。交通局はニューヨーカーの意識向上を狙いたい考えだ。

 なお、一部のサインは一般向けに販売もされ、一枚65ドルで購入できる。

 同局は、飲酒運転防止(DWI)基金からのニューヨーク州補助金を基に今後、信号機柱や駐車場、事故多発地区など216か所に設置される予定で、そのうちの半数には、携帯電話使用による事故防止対策として、スマートフォンで俳句がスキャンできるQRコードが記されている。

 全12句(10句は英語、2句はスペイン語)は、アトランタで俳人として活躍するジョーン・モース氏が制作した。17音節から成る俳句は、近年多くの小学校で課題として導入されており、米国人にとってもなじみ深い。

 ジャネット・サディックーカーン同局長は「ニューヨーカーは、リズム感のいいメッセージに慣れ親しんでいるため、少々ユーモアを加えた俳句は目に留まりやすいだろう」と期待している。

 ニューヨークタイムズ紙も11月30日付と12月1日付でこの俳句の道路標識採用について報じた。読者からの投稿では「俳句の意味を考えている間に事故を起こすのではないか」と心配する声や「芸術が危険なものであるニューヨークでは危険なものが芸術になる」などといったコメントが掲載されている。

 俳句の道路標識が常設となるか、ならないか―。ザット・イズ・ザ・クエスチォン。