マット安川 ロシアでの選挙に異変、デモも勃発、しかし・・・日本国内の報道だけでは分からない最新のロシア情勢のほか、前沖縄防衛局長の暴言問題や野田首相への評価について佐藤優さんにお聞きしました。
沖縄防衛局長の暴言事件で露呈した危機管理の危うさ
元外交官、文筆家 インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』など著書多数。近著に『世界インテリジェンス事件史』。(撮影:前田せいめい、以下同)
佐藤 前沖縄防衛局長、田中聡さんの暴言をめぐる一件はいくつもの問題をはらんでいます。
何より重要なのは防衛拠点の危機管理という側面です。琉球新報はその晩のうちに、記事にする旨を沖縄防衛局に伝えています。翌日新聞に載ったら大問題になるのは分かりきったことなのに、しかるべき手を打たない。東京に報告すらしない。
中国の脅威が迫る中、こうまでボンヤリした人が沖縄の最高責任者だったのですから、困ったものです。こういうことでは、日本はあっという間に占領されてしまいます。
もうひとつ見過ごせないのは、防衛省が発表した文書の内容が事実かどうかです。この文書は、田中さんは「犯す」という言葉を使った記憶がないとしています。これが事実なら彼は報道被害者ということになる。本人なり防衛省なりが、抗議するのが筋でしょう。
実際はそういう発言をした、なのにしていないとウソをついたのだとしたら、これは別のスキャンダルですよね。記憶がないなんていうのは通用しません。国家公務員の試験に通るのは、「記憶力だけ」はいい人なんですから。本当に覚えてないのなら、その時点で公務員失格です。
そして官僚としての品格の問題。私も官僚時代、何度もやったことがありますが、この種のオフレコ懇談は酒をかっくらっての大放談会じゃない。れっきとした公務なんです。
そういう場でレイプとか買春とかを想定した言葉がひょいひょい出てくるのは、普段からそういうことを考え、そういう言葉を使ってるからでしょう。情けないと言うしかありません。
政治家は人事で脅す小泉方式で官僚を従わすべし
くだんの暴言事件をめぐっては、一川(保夫)防衛大臣のめちゃくちゃな答弁も話題を呼びました。私はあれには裏があると見ています。
国会質問というのは事前にこういう質問をするという通告があるんです。それを受けて官僚がシナリオを書き、大臣に渡しておくものなんですが、あの日はそれがなかった。国会の場で立ち往生させてやれということでしょう。