- 2005年までの10年間で潜水艦を31隻就航させた中国
- 核抑止力として期待された水面下からのミサイル発射能力
- 現代の魚雷は1発で大空母を大破できる
- ミサイルを装備しないからと言って過小評価は禁物
- 潜水艦の頼りはパッシブソナーと電波探知機
- 探知から攻撃までには時間が必要
- 外部情報の入手が潜水艦行動のカギ握る
- 中国の潜水艦は米空母キティホークを撃沈できた
- 弱者の兵器と呼ばれる潜水艦
- 我が国の海上航路には様々な国の潜水艦がうじゃうじゃいる
- 実際の作戦に使えるのは保有潜水艦の3分の1
- 中国は常に10隻程度の新型潜水艦を作戦に従事させられる
- ドイツ海軍が編み出した「ウルフパック」作戦とは
- レーダーの開発で効果を失ったウルフパック
- 原子力潜水艦の登場で捜索はいよいよ困難に
- 進んだ捜索技術、しかし潜水艦の対策も進化
- 米軍が誇るTAGOSの能力とは
- 米原潜は対象国のミサイル潜水艦を常に追尾
- 米国の最新技術を突破した中国の潜水艦
- わざわざ米軍に見つかって能力の高さを見せつけた中国
米空母キティホークの護衛圏内で、知らぬ間に入り込んでいた中国「ソン」級潜水艦が浮上していた、というニュースをご覧になったことがあるだろうか?
2005年までの10年間で潜水艦を31隻就航させた中国
1995年から2005年の間に中国が31隻の潜水艦を就役させ、引き続き新造艦を建造している、というニュースはどうだろう。
これらのニュースは中国ではなく米国から発信されたものであり、米国が中国潜水艦に対して警戒感を強めていることがうかがえる例であるが、そうしたことを感じることができただろうか。
こういう報道を目にした時、そもそも潜水艦にどれほどの軍事的な価値があるのか、潜水艦の数にはどんな意味があるのか、潜水艦に対抗するための軍事的な対策にはどんなものがあるのか、といった基礎的な知識があると、報道に対する理解の深さが相当違ってくるだろう。
そして例えば、中国海軍力の増強、とりわけ潜水艦勢力の拡大が米国に与えるインパクトの強さも、理解できると思われる。
そこでここでは、報道の意味するところを理解するために必要な、潜水艦について知っておくべき基本的な8項目の知識について述べてみたい。
その1 潜水艦の軍事的価値
潜水艦の軍事的な価値は、光や電波の届かない海中から突然ミサイルや魚雷を発射できることにある。またその隠密性から、特殊作戦部隊を上陸させるような作戦も可能である。さらには情報収集にも使われるが、衛星や長時間滞空可能な無人偵察機などが発達している現代では、この用途での重要性は低下している。
核抑止力として期待された水面下からのミサイル発射能力
突然ミサイルを発射する能力は、まず核抑止力として利用されている。核抑止というのは、敵の先制核攻撃を生き延びて報復する能力が常に維持できていることを顕示し、それによって先制核攻撃を思い止まらせることである。
核兵器の命中精度が100メートル単位で語られる現代では、陸上の強化されたミサイルサイトも第1撃で破壊される可能性があることから、水中にあって第1撃による被害を受けることのない潜水艦搭載の弾道核ミサイルが核抑止の主役となっている。
突然のミサイル発射は当然、戦術場面でも使用される。近距離から、従ってこれを迎撃する時間的余裕がほとんどない場所から戦術ミサイルを発射されることは、ミサイル対応能力を持っている水上の戦闘艦艇にとっても脅威である。
