イースター休暇明けの欧州債券市場は、ギリシャ国債が売り込まれる展開となった。4月8日、同国の10年債利回りは7%台前半に急上昇し、対ドイツ国債スプレッドは400ベーシスポイントを超える、1999年ユーロ導入以降の最大値を記録した。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場におけるギリシャ国債の保証コストも同様に過去最高水準となり、国際通貨基金(IMF)に救済されたアイスランドの保証コストを初めて上回った。
欧州債の市況記事には、為替市場関係者による以下のようなコメントがあった。
「ギリシャは引き続き、スローモーションの列車衝突のように見える。衝突はまだ起こっていないが、近づいている。衝突を避けようとする努力は、それが緊急融資であろうと他の手段であろうと、失敗するのを運命づけられているように見える。国債のスプレッドはさらにずっと拡大する可能性が高い」(4月8日ブルームバーグ)
同時に、為替市場ではユーロ売り圧力が強まり、ユーロ/ドル相場は8日の東京市場で1ユーロ=1.3285ドル、ロンドン市場で1.3282ドルまでユーロ安ドル高が進行。3月25日に記録したユーロの直近安値である1.3267ドルに急接近した。この3月25日というのは、ギリシャ支援問題へのIMF関与に強く反対するトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁発言が伝わった日であり、ユーロ圏16カ国首脳が2国間融資とIMF融資を組み合わせる対ギリシャ金融支援策で合意に達した日である。
金利(資金調達コスト)は高止まりしたままながらも、4~5月の国債償還に伴って必要な国債発行をギリシャ政府が徐々に実行していく中で、今年のテーマとされる「ソブリンリスク」の主戦場からギリシャはいったん外れたものと、筆者は受け止めていた。だが、実際にはそうならなかった。考えられる理由はいくつかある。
(1)3月25日に決まったギリシャ支援策は、州議会選挙を控えるドイツの国内事情や、形だけでも支援策ができることで債券市場のデフォルト(債務不履行)懸念を沈静化させて金利水準を下げたいギリシャの思惑などが交錯する中で決まった、一種の妥協の産物であり、しかも実際には発動されないことを関係者が暗黙の前提にしている話である。当然、市場はこの合意の足下を見透かしており、ギリシャ国債が再度売られる素地はあった。
(2)ギリシャがIMFによる厳格な融資実行条件(コンディショナリティー)を嫌って支援策の修正を求めているという報道がMNSIから出てきた(ギリシャ政府高官はこれを否定)。8日にはドイツの新聞が、独連銀内部にギリシャ支援策への反対意見があると報道。3月25日の支援策合意に関して、足並みの乱れが早くも見え隠れしている。