中国のネット事情はと言うと、日本では枕詞のように「ネット検閲」をつけて見ている読者が多いのではないだろうか。確かにそれは的を射ており、例えば、話題になったグーグルの中国撤退についても、中国では政府の意見だけがメディアで流され、グーグルや米国の意見はほとんど流れないという事実がある。

中国で検閲されるのは政治などごく僅かの情報だけ

グーグル、検索不具合は「万里のファイアウオールが原因」

中国の北京にあるグーグル・チャイナの本社ロゴ〔AFPBB News

 外国の情報が遮断されるということは目立つだけに、それが中国で流れる情報の実情に思えるかもしれない。しかし、だからと言って中国のネットでは海外の情報が十分取れないと思い込むのは早計だ。

 遮断される情報は中国政府がナーバスになっている情報だけであり、それ以外の情報については中国国内で大量に配信されている。むしろ、日本よりも中国の方が世界中の話題がネットにあふれているように思う。

 例えば、中国でグーグルとのシェア争いで圧倒的な優位に立ってきた検索サイトの百度(Baidu)で、仮に「日本」と入力し、ニュースを検索(新聞検索)してみれば一目瞭然だ。

 中国語が読めなくても、数十分に少なくとも1つの日本に関する記事が、どこかの中国メディアから配信されてくることが分かるだろう。

 中国のメディアの商習慣として、どこのメディアがオリジナルかを明記すれば全文コピーして掲載できるというルール(信息网絡伝播権保護条例という条例で定められている)があり、読者が興味を持ちそうな記事は瞬く間に多くのメディアが同文を配信する。

海外メディアの記事を翻訳して流す中国メディア

 中国人にとって、日本は最も関心のある国の1つではあるが、それ以上に頻繁に報道される国々も多い。国によっては数分も経たずに新しいニュースが配信されている。中国メディアは外国の最新情報を好んで母国語に翻訳し、中国国内に配信しているのだ。

 もちろん、「▲■晩報」という庶民向けの新聞でも海外の情報は遅れて掲載されるが、ネットメディアでの人気記事の後追い感がある。いずれにしろ中国では、ネットでも新聞でも海外の情報がどんどん入ってきている。

 中国には2009年末で3億8400万人のインターネット利用者がいる(CNNIC調べ)が、そのうちの61.5%にあたる2億3600万人が30歳未満の利用者である。文化大革命の後に生まれたという大きな枠組みの中では新世代の彼らは、物欲が旺盛なだけでなく、海外がどうなっているのかという情報意欲も旺盛だ。

 一方で文化大革命を経験した、「断層の世代」とも呼ばれる1950年代生まれ(中国語で言うところの「50後」)、1960年代生まれ(同「60後」)の世代は、インターネットを利用する率も極めて低く、40歳以上のインターネット利用者は、全体の17.1%、すなわち人口にして6600万人しか利用していない。