前回は、女性も男性も本質的に浮気性であることを述べてきました。その理由は、自分の遺伝子を後世に遺すためです。今回はそのことをもっと科学的に見てみましょう。生物学的立場から、人間(特に女性)が根源的に浮気性である証拠を提示したいと思います。

 生物学者は様々な仮説を提示していますが、その中で最も説得力のあるものを4つ、述べておきます。その4つとは、「精子の特徴」「睾丸の大きさ」「ペニスの形状」および「精子数の調整」です。

証拠その1 「精子の特徴」

男性用の生殖能力診断キットを開発、精子の質で判断 台湾

冷凍保存された精子(デンマーク)〔AFPBB News

 男性の生殖機能の特徴から、男女が浮気性であることの証拠を提示することが可能ですが、第1に「精子の特徴」が挙げられます。

 妊娠とは、女性が月に1度排出する卵子に精子が進入して受精し、新しい生命が宿ることを言いますが、1回のセックスで約2億~5億個の精子が射精されます。ここではとりあえず3億という数字を便宜的に使います。

 その3億の精子がすべて、女性の卵子をめがけて直進していくわけではありません。

 実際にはその多くが、別の精子の侵入を防ぐ「ブロッカー精子」(Blocker)であり、他人の精子を見つけて撃退する「キラー精子」(Seek and Destroy)も存在します。両者を「カミカゼ精子」と呼ぶ学者もいますが、このカミカゼ精子は、膣から子宮を通って卵子に向かう精子「エッグゲッター」(Egg-Getter)とは役割が異なります。「エッグゲッター」の数はブロッカーに比べてはるかに少なく、数百万程度です。

 この精子の役割分担は何を意味しているのでしょうか?

 なぜ男性の生殖機能である睾丸でカミカゼ精子を作り出さねばならなかったのかというと、女性が1人の男性から出た精子が生きている間に、別の精子を膣内に受け入れたためです。もし女性が浮気を全くしなかったら、何億というブロッカーやキラー精子を作り出す必要はなかった。それなのに存在している。

 これは「女性が全く浮気をしていない」という前提が間違っているのです。しかも一生に1度や2度の浮気ではありません。1年に1度や2度でもありません。

 膣内に入った時点での精子の寿命はせいぜい5日間程度ですから、私たちの祖先の女性は、この5日間に複数の男性と性行為を行ってきたということになります。しかも、何億というブロッカー精子などを作り出すほどに頻繁に、です。