前回は、これからの地域再生が目指す姿とはどのようなもので、その実現のための戦略とは何かというテーマでした。
その中で、これからの地域再生は2つ戦略を進めることがポイントです、というお話をさせていただきました。
1つは、「誇りの空洞化」を食い止め、「地域コミュニティーの絆の再生」を図ることです。具体的には、そこに暮らす住民が主体となること、「暮らしの満足度」や「幸福度」をどう高めていくかに価値軸を置くこと、「住み続けたい」と思える地域のイメージを地域コミュニティーで共有し、共に形作っていくことなどが目標となります。
そしてもう1つは、地域内でモノやカネが循環する乗数効果の高い「地域内循環型経済の構築」です。
今回は、地域コミュニティーが中心となって地域の暮らしの安全・安心や活性化に向けた取り組みを進めている事例を見ていきたいと思います。
2010年5月に経産省が、近隣の商店街の衰退や公共交通サービスの廃止等によって、日常の買い物が不自由になっている高齢者層の「買い物難民」が全国で約600万人に上ると推計した報告書を発表しました。高齢化の進む中、特に山間地域などの条件不利地域での買い物難民問題がクローズアップされたことは記憶に新しいかと思います。
自分たちの暮らしを守るために、食品や雑貨などの日用品を購入できるコンビニを住民自らが出資して経営するなどの取り組みが各地で始まっています。
厳しい環境に置かれている地域だからこそ、地域への誇りと愛着を礎に地域住民が立ち上がり、「自分たちにできることは自分たちの手で」を基本として、暮らしの安全・安心や活性化に向けた取り組みを進める地域が出てきているのです。
その代表格とも言える取り組みの1つが、広島県安芸高田市の川根地域の事例でしょう。この地域の取り組みについて、詳しく見ていきたいと思います。
洪水で過疎化に拍車、危機感から「振興協議会」を設立
川根地域は、広島県安芸高田市の北端に位置し、19の集落から構成される地域です。2009年3月末時点の地域内人口は570人(247世帯)、高齢化率は46%となっています。