全国人民代表大会の閉幕にあたって3月14日に記者会見した中国の温家宝首相は、米国が中国に対して人民元を切り上げるよう圧力をかけていることに対して、強く反発。同時に、世界一の米国債保有国の立場から、米国債やドルの価値安定を米国政府に促した。以下のような発言が伝わっている。

「人民元は過小評価されていない」

「金融危機下でも安定を維持することで、人民元の為替相場は世界経済の回復を促した」

「人民元相場については、経済の状況を総合的に見て決めていく」

「各国が互いを批判したり、ひどい場合には強制的な方法で為替相場の切り上げを迫ったりすることには、反対する。それは人民元相場の改革にも不利益になる」

「外貨運用の基準は安全性、流動性、価値上昇の3点」

「不安定なドル相場を、われわれは非常に憂慮している」

「私は去年、(米国債やドルについて)心配していると述べたが、今年も依然として心配していると言わざるを得ない」

「米国債は米国の信用力が担保。米国は実際の行動で投資者を安心させてほしい」

 これより前、中国人民銀行の蘇寧副総裁は3月12日、「自国の問題を解決するのに、他国に頼るべきではない。中国は人民元の政治問題化に賛成しない」と発言。「中国が為替相場を切り上げても米国の貿易赤字問題は解決しない」「米中の黒字や赤字は為替相場に起因するものではない」「中国は決して貿易黒字を追求していない。輸出入の均衡実現に努めている」とした。

 また、3月9日には中国国家外貨管理局(SAFE)の易綱局長が記者会見し、「米国債市場は世界最大の国債市場だ。中国の外貨準備は巨額であり、米国債市場が中国にとって重要な市場であることは想像できるはずだ」「(米国債の保有は)市場での投資行為であり、政治問題化したくない。われわれは責任ある投資家であり、投資により、双方に有利な状況を確実に実現できる」と述べていた。

 一方、米国サイドでは、中国に人民元切り上げを迫る強硬な意見が、オバマ大統領の姿勢転換もあって、このところ一段と強まっているように見える。

 3月12日にワシントンで開催されたシンポジウムに出席したクルーグマン米プリンストン大教授は、「中国が為替操作を行っているとの明白な事実について再びお茶を濁すのは、おそらく非常に難しいだろう」「確かな脅威を与えなければどうにもならない」「中国に為替操作をやめるよう圧力を掛けた場合の中国側の反応を恐れるべきではない」という、実に強硬な発言を行った(ロイター)。また、ピーターソン国際経済研究所のバーグステン所長は、「人民元は少なくとも25~40%過小評価されている」とした(同)。