3月5日から出始めた「追加緩和を検討」との観測報道に沿って、日銀はこのまま追加緩和に踏み切るのか。その場合、最有力視される新型オペ拡充の内容は規模と期間についてどのようなものになるのか。これらの点に関する筆者のコメントは、3月8日作成「日銀の新型オペ拡充」で、すでにお伝えした。筆者は、新型オペの上積み額は10兆円で、そのタームについては3カ月物のほかに6カ月物、場合によっては1年物も新たに導入するのではないかと予想している。
ただし、追加緩和が行われるとして、そのタイミングは3月中なのか、それとも4月に予定される2回の会合のいずれかになるのかについては、追加緩和(「広い意味での量的緩和」の強化)というメッセージを日銀が発する際に主要なターゲットの1つになると目される為替相場の動き次第の面があるため、現時点では流動的だと言うほかはない。
ここでは、上記リポート作成後に出てきた情報を中心に、さらなる考察を加えておきたい。
(1)政府が3月の月例経済報告で景気判断を8カ月ぶりに上方修正させる見通しになったこととの兼ね合いは?
日経新聞は3月11日朝刊で、政府が3月15日に公表する月例経済報告で、景気の基調判断を昨年7月以来、8カ月ぶりに上方修正する方針を固めたと報じた。「持ち直している」という表現に、「着実に」といった表現を加える見通しだという。3月の金融政策決定会合終了後の対外公表文と金融経済月報ですぐに歩調を合わせるとは限らないものの、政府と日銀の経済状況認識はおおむね一致していることになっているので、日銀の側でも景気判断の上方修正が行われるだろう。その場合、景気判断を上方修正することと、追加緩和を行うこととの整合性を問う声があるかもしれない。
しかし、上記日経報道によると、政府の月例経済報告は、「引き続き国内経済はデフレ状況にあることも強調する」という。追加緩和問題で焦点になっているのは、足元の景気のベクトルではなく、デフレである。また、近年の日銀による金融政策運営でも、日銀自身による明確な景気判断の上方修正よりも後に追加緩和が行われたことがある。量的緩和を行っていた日銀は2004年1月20日、当座預金残高目標をそれまでの「27兆~32兆円程度」から「30兆~35兆円程度」に引き上げた。結局はこれが最後の量的緩和拡大になったわけだが、日銀が金融経済月報で示す判断は、2003年11月に「緩やかに回復しつつある」、12月には「緩やかに回復している」へと上方修正されていた。言うまでもなく、この「回復」という文字が含まれている判断は、今年2月の「国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している」よりも、強い景気判断である。
日銀が3月16、17日に開催する金融政策決定会合については、「物価の下落幅縮小の鈍さが民間マインドに与える影響、設備投資を中心とした国内景気の先行きなどの点検が主要な検討課題になりそうだ」という(3月10日ロイター)。また、少し前になるが、2010年度予算が成立すれば菅直人副総理は日銀との政策協調を具体化させるだろう、との内閣府幹部のコメントが報じられていた(2月26日共同)。