次世代のメディアのビジネスモデル構築に向けて「イノベーション」というコンセプトが重要視されてきている。
この10年ほどで先進各国では高速通信環境が整い、一般家庭でも音声や動画情報のやり取りもストレスなく行えるようになった。このため、ついつい、新しいビジネスにはネットを活用しなければならないように思い込みがちだ。
新聞、ラジオ、テレビ、雑誌など、葛藤を続ける既存メディアが次の「何か」を見つけようとするのであれば、ブロードバンドネットワークの活用のみならず、既存のシステムを視点を変えて見直してみることも必要だ。
つまるところ、既存マスメディアが生き残りを懸けるのであれば、このようなコミュニケーション環境の中で「イノベーション」とどのように向き合うかが重要になる。
「イノベーション」とは何か?
JBpressでも「イノベーションを斬る」などでイノベーションの意義や重要性が論じられており、その意味するところは論者によって微妙に異なるようだ。本稿でのイノベーションは「新しい商品、技術、アイデア」とする。
メディアコミュニケーション学の中では、イノベーションがコミュニケーションチャンネルを通して、社会システムの構成員間において、特定の時間的経過の中で伝わってゆく過程を説明しようとする「イノベーション普及学(Diffusion of Innovations)」が大きな研究領域として確立している。
イノベーションが社会にどのように受け入れられていくのか、その過程を時間的経過に沿って説明しようとするもので、企業マーケティング戦略にしばしば活用される。例えば、新製品Aを社会にスムーズに受け入れてもらい、恒常的な消費につなげるために、この理論は役立つ。