昨年6月8日付の当コラムで紹介した人口52人のフランスはブルゴーニュの村。セーヌ河の源流を村内に持つその「ソース・セーヌ」村から、旅へのお誘いを受けた。行先はイタリア。

 6月のコラムをご覧になった方はご想像がつくかもしれないが、ブルゴーニュのソース・セーヌ村と姉妹都市になっているイタリアの村、「ヴェルゲレット」村を訪問するための旅である。この2つの村の馴れ初めというか姉妹都市になった理由というのは、首都を流れる河の源流を村内に持つというもの。

セーヌ川、テベレ川の源流がある町

テベレ河の源流があるイタリア・ヴェルゲレット村の村役場

 ソース・セーヌ村がパリを流れるセーヌの源流なら、ヴェルゲレット村にはローマを潤すテベレ河の源流がある。そんなご縁で2つの村は2001年に姉妹都市となり、以来毎年交互に交換訪問を続けている。

 昨年ヴェルゲレット村の人たちがフランスに来たということは、今年は逆にソース・セーヌ村の人々がイタリアを訪問する番。つまり、私はその訪問団に随行するお誘いを受けた。

 普通、この交換訪問は季節の良い時期が選ばれるのだが、今年は2月に行くという。

 ローマにも雪が降ったほどの寒波に見舞われたこの冬のヨーロッパ。どうして好き好んでこの時期にと思うが、それには理由があって、ヴェルゲレット村の現職の村長さんの任期中に間に合うように日程が組まれたということなのだ。

 イタリアの地方自治体の長の任期は5年間。継続しても2期、つまり10年間が最長ということで、ヴェルゲレット村の村長さんの任期はこの3月に満了となる。だから駆け込みで・・・というのが最大の理由である。

フランス人もよく知らないセーヌの源流

 そもそも彼こそが姉妹都市の立役者で、彼が発案しなかったら、この縁組はありえなかった。首都を流れるテベレ河の源流をわが村に持つというのは、村人たちにとっては誇り高いことに違いないが、そこから発想して、セーヌの源流の村と姉妹都市を結ぶという構想がヴェルゲレット村の村長さんの頭に浮かんだのが、10年ほど前のこと。村長さんになりたての頃だ。

 ところが最初は地図で確認しようにも、セーヌ河の源流の位置はなかなか把握できず、自治体の名前も分からなかったという。村長さんの難渋は私にもよく分かる。現在ほどインターネットが普及していないころに、それを突きとめるのはなかなか難しいことだったから。

 ちなみに、フランス人に対して「セーヌの源流はどこか?」という質問を向けた時、きちんと答えられる人はまずいない。ほとんどの人が、鳩が豆鉄砲をくらったようなきょとんとした顔をして、空にあやふやな地図を浮かべようとする。

 フランスのブルゴーニュあたりに照準を定められる人はかなり上等で、「スイス?」という答えだって珍しくはない。こんな具合だから、外国人が外国にいながらにしてセーヌの源流を突きとめるのはなかなか困難なことだった。