11月10日、ブッシュ大統領はオバマ次期大統領をホワイトハウスに招いた。メディアは「初の黒人大統領がホワイトハウスの大統領執務室に足を踏み入れた歴史的な日」と報じ、2人がホワイトハウスの玄関前で握手する様子を流し続けた。
しかし同時に発表された世論調査はこの映像を、米国史上最も支持率の低い大統領と、最も好感度の高い新大統領の対面に変えてしまった。
ブッシュ大統領の支持率は27%。任期終了までに回復しなければ、これまでのワースト1位、トルーマン元大統領(32%)を下回り、歴代トップとなる。トルーマンとカーター元大統領を除いて、支持率5割以下でホワイトハウスを後にした大統領はいない。支持率27%とは、驚異的に低い数字なのだ。
一方、オバマ次期大統領の好感度は史上最高で、70%の米国人が期待していると答えている。これは、オバマが選挙で得た53%という一般投票数よりもずっと多い。彼に投票しなかった人も好感度を持ち、期待しているということになる。
オバマを支持した層とは
今回の大統領選は記録的な投票率となると予測されていたが、そうはならなかった。投票率は62%。前回の大統領選とほぼ同じ数字だった。民主党支持の投票者数は確かに増えたが、その分共和党支持の投票者数が減ったため、全体の投票率が伸び悩んだ。
では、どのような人たちがオバマに票を投じたのだろうか。投票者の内訳は以下の通りである。
【無党派】 勝敗のカギを握ると言われた無党派層は、結局真っ二つに割れ、どちらの陣営にも有利に働かなかった。ぴったり50%がオバマに、50%がマケインに投票している。
【年齢別】 事前の予想に反して、若年層(18~29歳)の支持率は伸びず、前回の選挙と同率という結果になった。特筆すべきは、30歳から64歳の層での支持者数拡大だ。前回の選挙に比べ10%増えている。
【性別】 男性の50%、女性の56%が民主党に投票したが、この割合は前回の選挙とあまり変わらない。
【学歴別】 大学院卒以上の学歴の層で、民主党に投票した人が前回に比べ11%増えている。大卒・大学中退層でも民主党支持者数が7~8%伸びている。
【人種別】 黒人票の99%は民主党に投じられた。黒人は、歴史的に民主党支持の傾向が強いが、この圧倒的な数字は史上最高である。白人票の44%が民主党に投じられたが、この数字は前回とほぼ同じだ。
つまりオバマを支持したのは中高年、高学歴者、そして黒人たちだ。変化を強く求めているのは、この層だと言える。
人種問題はなくなったのか
今回の大統領選では「人種問題」がどのように影響するかが注目された。有り体に言えば、大統領選で白人は黒人に投票するか、ということである。
選挙で黒人候補と白人候補が戦う際に、必ず取りざたされるのが「ブラッドリー効果」と呼ばれる現象である。事前の世論調査で高い支持率を記録しながら、実際の投票率が伸び悩み落選してしまうことを指す。
人種差別者だと思われたくない有権者が、事前の世論調査に「黒人候補に投票する」と嘘を言い、実際には白人候補に投票するために起こる現象だと言われている。1980年代にカリフォルニア州知事選で、黒人候補のブラッドリーが、選挙前の高い支持率に反して落選してしまったことに名前が由来している。