人間の幸福とは何だろうか。一体、それは数字で測定できるのか・・・。こう考えながら、ヒマラヤ山脈にあるブータンの寒村、ポブジカまでやって来た。(写真も筆者提供)
日本はGDP(Gross Domestic Product=国内総生産)で世界2位の座を中国に明け渡す日が迫り、日本人の心中は穏やかでない。一方、ブータンは成長至上主義を排除してGNH(Gross National Happiness=国民総幸福)を国政の基本指針に据え、チベット仏教文化の下で精神的豊かさと経済発展の両立を目指してきた。
標高3000メートル、ブータンの田舎に泊まろう!
標高3000メートルのポブジカ村は、氷河が削り取ったU字谷の湿地帯に位置する。ヒマラヤ山脈を望み、そこからオグロヅルが飛来する以外、訪問客は見当たらない。渓谷に電柱や電線はなく、農家がぽつんぽつんと点在するだけ。静かに、ただ静かに時間が流れている。
今回は農業を営むペム・シンレーさんにお世話になり、「ファームステイ」を体験した。年齢を尋ねたら、「誕生日は覚えていないが、およそ59歳だよ」と、はにかみながら答えてくれた。
家屋は木造2階建てで、1階は農作物の倉庫。2階の住居スペースは部屋が4つあり、肉やコメの保管庫、台所、居間、仏間に分かれている。筆者の一行は台所で食事をいただき、仏間で寝起きした。トイレは別棟にあるが、地面に穴を掘って柵で囲んだだけ。このほか、敷地内には牛と鶏の小屋が造られていた。
シンレーさん宅は、奥様のニム・デムさんと17歳の長男ウゲン・ドルジさんの3人家族。主にご主人が農業、奥さんが家事を担い、一人息子は家屋の建築現場を手伝いながら、夜は非営利団体(NPO)が開く「ノンフォーマル教育」を受講している。ブータンでは結婚すると夫が妻の家に引っ越してくるケースが多く、この家屋も元々はデムさんのものという。