4日の米株式市場で、ニューヨークダウ工業株30種平均が、取引終了間際に一時1万ドルの大台を割り込んだ(取引時間中としては昨年11月6日以来)。終値は1万2.18ドル(前日比▲268.37ドル)。前日比▲200ドル超の急落は、今年に入ってから3回目。▲268.37ドルという下落幅は、昨年4月20日に記録した▲289.60ドル以来ということになる。
米国株の売り材料になったのは、ギリシャからポルトガル、スペインへと「伝染」してきているユーロ圏諸国の財政悪化懸念からの欧州株安に加え、この日発表された1月30日までの週の米国の新規失業保険申請件数(イニシャルクレーム)が48万件(前週比+8000件)となり、市場予想を上回ったことである。週ごとの振れを均すために用いられている4週移動平均は46万8750件で、3週連続の増加となった。これが、米国の雇用情勢が足元で悪化方向に向かっているのではないかという懸念を強めることにつながった。
4日にもう1つ注目されていたのは、イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)。資産購入プログラム(量的緩和)の限度額をさらに拡大することはなく、市場の大勢が予想していた通り、拡大の休止が決定された。
イングランド銀行の資産購入プログラムが750億ポンドを限度額に設定して導入されたのは、昨年3月5日。その後、3カ月ごとに見直しがかけられてきており、同年5月7日に1250億ポンド(500億ポンド増額)、8月6日に1750億ポンド(500億ポンド増額)、11月5日に2000億ポンド(250億ポンド増額)という流れをたどってきた。しかし、今回の休止決定で、3カ月ごとの限度額引き上げというパターンは止まった。
英国の昨年10-12月期の実質GDPは、速報で前期比+0.1%。7四半期ぶりのプラス成長回復ではあるものの、市場予想よりも弱い、景気回復力の脆弱さを示す結果だった。一方で、昨年12月の消費者物価指数は前年同月比+2.9%で、市場予想よりも上振れ。景気対策として実施された付加価値税引き下げの終了などで、上昇率は急加速となった。ただし、そうしたテクニカルな面を含むインフレ率の一時的な高まりは、イングランド銀行が想定している範囲内の動きである。
英国の量的緩和は、フロー(国債などの資産購入額の着実な上積み)だけではなく、むしろストック(資産購入の対価として積み上がった多額の準備預金)によって金融緩和がもたらされるという考え方に立っている。したがって、今回の購入限度額の引き上げ休止は、金融引き締めということではなく、緩和度合いをこれ以上強めることなく様子見姿勢に入ったということである。イングランド銀行のキング総裁は、過去の発言からみて、バブル崩壊後の日本の教訓を十分念頭に置いて政策運営にあたっているようであり、早すぎる金融緩和撤回が有害であることは理解しているはずである。事実、イングランド銀行の声明文は、「過去の買い入れによるストックと、低水準のバンクレート(政策金利)が、今後しばらくの間、経済に金融面からかなりの刺激を与えることに、MPCは留意した」「資産購入プログラムの適切な規模をMPCは引き続き注視する意向であり、見通しによって正当化される場合には、さらなる買い入れが行われるだろう」として、資産購入の再開という選択肢が存在していることを明記した。
楽観論に依拠してきた株価が反転下落し、リスク回避志向の強まりを背景に為替市場では円高の流れが再度強まりつつある。そうした中で、市場関係者がもう一度読み返してはどうかと筆者が考えるのが、かの有名な「偽りの夜明け」発言である。